H29第1回-通信線路-問1 電気通信主任技術者(線路)

(1)次の文章は、一様線路及び複合線路の概要について述べたものである。
通信線路の材質、寸法などが長さ方向に対して一様な往復2導体が均質な空間にあり、かつ、導体間隔が線路長及び伝搬される正弦波の波長と比較して十分小さい線路は、一様線路といわれる。
図に示すように、特性インピーダンスZ0の一様線路をインピーダンスZγで終端した場合、Zγにおける【位置角】をθとすると、θは【tanh^-1(Zγ/Z0)】で表され、任意の点における電圧、電流及びインピーダンスを簡単な計算により求めることが可能となる。
例えば、伝搬定数をγとすると、終端したインピーダンスZγから距離χの点のインピーダンスZχを求めるとき、終端から距離χの点の【位置角】をθχとすると、θχは【γX+θ】で表されるため、Zχ=Z0tanh(【γX+θ】)となる。特別な場合として終端短絡の場合、終端の【位置角】は【0】となる。
特性インピーダンス及び伝搬定数の異なる幾つかの線路を縦続接続することによって構成される線路は複合線路といわれ、複合線路は、一様線路と比較して、より現実的である一方で、解析が複雑である。しかし、この複合線路も一様線路の考え方を基礎にして【位置角】を導入することにより解析を容易にすることができる。
H29-1問1
(2)次の文章は、光ファイバ通信システムの特徴、光源と光ファイバとの結合方法などについて述べたものである。
(ⅰ)光ファイバ通信システムの特徴などについて述べた次の文章のうち、正しいものは、【②】である。
①光ファイバ通信システムの伝送距離は中継伝送方式とすることにより延伸することが可能である。中継伝送方式には、中継器で光-電気-光変換を行う【再生中継伝送方式】と、光領域で増幅して伝送する【線形中継伝送方式】がある。
メモ:
再生中継伝送方式 3R
線形中継伝送方式 1R
②光ファイバ通信システムにおいて、伝送距離を制限する要因には、光ファイバ損失、SN比、伝送速度、送信光出力などがある。無中継光ファイバ通信システムでは、光ファイバ損失と送信機の光出力が一定であるとき、伝送速度を上げようとしたり受信信号のSN比を大きくしようとしたりすると、一般に、伝送距離は制限される。
③線形中継伝送方式には、光増幅器で生ずる自然放出光雑音の累積による【SN比の劣化】、光ファイバの分散によって生ずる【信号光波形のひずみ】など、再生中継伝送方式と異なり、伝送路で生じた雑音やひずみが累積するという欠点がある。
④再生中継伝送方式では、一般に、識別再生回路による【リジェネレーティング】、タイミング抽出回路によるリタイミング及び等化増幅回路による【リシェーピング】の3R機能を有する中継器を用いて長距離伝送を実現している。
(ⅱ)レーザ光源と光ファイバとの結合方法などについて述べた次のA~Cの文章は、【ACが正しい】。
A光源は、レンズなどの光学部品から反射された光が注入されると、レーザの発振が不安定になることから、光源モジュールには、一般に、反射光の帰還を阻止するための光アイソレータが組み込まれている。
B光源からの光は、レイリー散乱【屈折や回折】により広がって放射されることから、光ファイバと効率良く結合させるために、光源に光ファイバの先端を単に近づける直接結合方式をベースにして、レンズを用いるレンズ結合方式、光ファイバの先端をレンズ状にした先端レンズ方式などが用いられる。
C光源と光ファイバとの結合部は、光源、レンズ、光ファイバなどの光学部品が振動、温度・湿度の変化などによる影響を受けないようにするため、一般に、モジュール化されている。光源モジュールには、伝送用光ファイバと接続するためのピグテール光ファイバが取り付けられたものがある。
(ⅲ)光ファイバと発光素子又は受光素子との結合損失などについて述べた次の文章のうち、誤っているものは、【③】である。
①光ファイバと受光素子との結合において、SM光ファイバとMM光ファイバとを比較すると、開口数が大きく光ビームの広がりが大きいMM光ファイバの方が結合損失は大きい。
②発光素子と光ファイバとの結合損失が発生する原因の一つとして、発光素子の出だ射光ビームの形状が、一般に、楕円形であるのに対し、光ファイバのモード形状が円形であることがある。
③発光素子と光ファイバとの結合において、SM光ファイバとMM光ファイバとを比較すると、コア径が小さいSM光ファイバの方が結合損失は【大きい】。
④発光素子と光ファイバとをレンズを用いて結合する場合、LEDとLDとでは、光ビームの広がる角度が異なるため、一般に、LEDは、LDと比較して、結合損失が大きい。
(ⅳ)希土類添加光ファイバの特徴などについて述べた次の文章のうち、誤っているものは、【①】である。
①光ファイバに異種又は同種の希土類イオンが高濃度に添加されている場合、希土類イオン間でエネルギー移動が起こることがあり、光ファイバの【濃度消光や増幅作用】の要因となる。
メモ:
②EDFの利得係数はエルビウムの添加濃度を高めることで大きくできるが、高濃度になると濃度消光により励起効率は低下する。
③EDFと伝送用光ファイバのクラッド径及び素線径は同じであるが、増幅性能を向上させるため、EDFのコア径は、一般に、伝送路用光ファイバのコア径と比較して小さくなっている。
④EDFのコアには、増幅動作のためのエルビウムと屈折率プロファイル形成用のゲルマニウムのほか、波長特性平坦化のためのアルミニウムが添加されているものがある。

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