H28第2回-通信線路-問3 電気通信主任技術者(線路)

(1)次の文章は、EDFAを構成する光デバイスについて述べたものである。
EDFAは、EDF、励起光源、光カプラ、光アイソレータ及び光フィルタの五つの主要なデバイスから構成され、1.55μm帯などでの増幅に用いられる。
メモ:EDFとはエルビウム添加ファイバ
EDFAにおける増幅媒体であるEDFでは、励起光によって励起状態にあるエルビウムイオンが、入射した信号光と【同位相】波長の光を誘導放出することによって信号光が増幅される。
EDFは、伝送用光ファイバと同じ石英ガラスを主成分とするSM光ファイバであり、そのクラッド径は125μmであるが、コア径は【増幅性能】を向上させるために伝送用光ファイバより細く、一般に、3μm~6μm程度である。
EDFAにおける励起光源には、一般に、エネルギー変換効率に優れる出力波長1.48μmのLD、理論限界に近い【雑音特性】が得られる出力波長0.98μmのLD又はそれら両方が用いられる。
光カプラは、励起光と信号光とを低損失で合波するためのデバイスであり、光アイソレータは、光ファイバや他の光デバイスからの反射光を阻止して雑音増加などを防止するためのデバイスである。
また、EDFの出力側に配置される光フィルタは、信号光帯域以外のASE光を除去するためのデバイスであり、【帯域通過】型が用いられる。
(2)次の文章は、光増幅器の種類、特徴、光変調方式の特徴、光合分波器などについて述べたものである。
(ⅰ)光増幅器の種類、特徴などについて述べた次の文章のうち、誤っているものは、【④】である。
①半導体光増幅器は、電流注入により励起が可能であり、希土類添加光ファイバ増幅器と比較して、小型で他の光デバイスとの集積が容易である、増幅可能な波長帯域幅が広いなどの利点を持つが、光通信システム用としては、光ファイバとの結合、偏波依存性などにおいて課題があり、希土類添加光ファイバ増幅器ほど普及していない。
②希土類添加光ファイバ増幅器は、光ファイバを増幅媒体として用いるため、他の光ファイバ部品との接続が容易であり接続損失が小さい、高利得である、偏波依存性がないなどの利点を持つが、特定の波長帯域しか増幅できないため、増幅する波長帯域を変えるためには添加物が異なる光ファイバを使用する必要がある。
③希土類添加光ファイバ増幅器の一種であるEDFAは、増幅波長帯域が石英系光ファイバの最低損失波長帯域である1.55μm帯に一致していることから、長距離系伝送システムにおいてプリアンプ、インラインアンプ、ブースターアンプなどとして用いられている。
④光ファイバラマン増幅器は、誘導ラマン散乱といわれる光ファイバのファラデー効果【光学フォノン】を利用しており、励起光波長を選択することによって任意の波長の光を増幅できる特徴を有している。
(ⅱ)光変調方式の特徴などについて述べた次の文章のうち、誤っているものは、【③】である。
①光ファイバ通信システムで用いられる変調方式には、LDやLEDの光強度を変化させてデジタル信号を伝送する強度変調があり、この変調方式では、1と0に対応した光強度の比が小さいと雑音などの影響を受けやすくなる。
②光ファイバ通信システムで用いられる外部変調方式は、LDから出射される無変調の光を変調専用のデバイス(外部変調器)を用いて変調するものであり、波長チャーピングが少なく、数GHz以上の高速変調が可能である。
③LN変調器は、ポッケルス効果を利用して位相変調、強度変調及び偏波変調が可能であり、位相変調の原理は、加えた電圧によって生ずるブラッグ反射【屈折率変化】を利用して、導波路を伝搬する光の位相を変化させるものである。
④EA変調器は、半導体の導波路における光の吸収量(損失)の波長依存性が、印加する電圧で変化する性質を利用したものであり、LN変調器と比較して、一般に、小型で動作電圧が低くLDとの集積が容易である。
(ⅲ)光分波・合波器及び光分岐・結合器について述べた次のA~Cの文章は、【ABが正しい】
A一つの入力端子から入射した複数の波長成分を含む光を、波長ごとに複数の出力端子に分岐し出射するデバイスは、光分波器といわれる。
B光合波器は、光分波器と逆の作用をするデバイスであり、一般に、光分波器の入出力を逆にすることにより、光合波器として使用することができる。
C光導波路型の光分岐・結合器の代表的な構造であるY分岐は、多段接続して1×N分岐を構成することが可能であり、光アクセス系のADS方式【PDS】方式などで広く用いられている。
線形中継器を用いた光中継システム(線形中継システム)の特徴などについて述べた次の文章のうち、誤っているものは、【③】である。
①全ての中継器が光増幅器で構成される線形中継システムは、中継器に識別回路、タイミング抽出回路など信号光の符号形式や伝送速度を制約する電子回路類を有しないことから、システムを構築した後でも伝送速度、多重する波長数などの変更が容易である。
②線形中継システムでは、信号光とASE光との間のビート雑音は中継器数に比例して増大し、また、ASE光とASE光との間のビート雑音は中継器数の2乗に比例して増大する。
③線形中継システムにおける線形中継器において、光出力レベルの上限値【下限値】はASE雑音の累積によるSN比の劣化によって制限され、下限値【上限値】は光ファイバの非線形性による波形劣化によって制限される。
メモ:光出力レベルが小さいとノイズの影響を受け、高いと波形劣化となる
④3R機能を持たない線形中継システムでは、線形中継器におけるSN比の劣化及び光ファイバの波長分散に起因する波形劣化の累積が、符号誤り率特性を決める支配的要因となる。

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