H29第1回-通信線路-問2 電気通信主任技術者(線路)

(1)次の文章は、光ファイバの構造パラメータについて述べたものである。
光ファイバ中の光の伝搬に大きく影響する【光学的】特性にかかわる構造パラメータには、開口数、カットオフ波長などがある。
開口数は、SI型及びGI型光ファイバのコアとクラッドの比屈折率差などによって決まる値であり、比屈折率差は、コア内の最大屈折率をn1、クラッドの屈折率をn2とすると、一般に、【(n1-n2)/n1)】で表される。
比屈折率差が大きいほど、コアとクラッドの境界面で全反射を起こす境目となる【臨界角】(コアとクラッドの境界面の法線と光とのなす角度を指す。)は小さくなり、コア内に光を閉じ込めやすくなる。
また、開口数は、光ファイバと光源の結合効率に影響を及ぼすパラメータであり、開口数が大きいほど結合効率が向上する。
光ファイバの寸法にかかわる構造パラメータには、コア径、クラッド径、コア/クラッド偏心率などがある。これらは、光ファイバの伝送帯域、機械的強度、光ファイバの接続損失などに影響を及ぼすパラメータである。
なお、コア径はMM光ファイバで用いられるパラメータであり、SM光ファイバでは、一般に、コアとクラッドの境界部分を明確に識別することが困難であるため、光エネルギーの分布から読み取った【モードフィールド径】が用いられる。
(2)次の文章は、分散制御光ファイバ、光ファイバの損失特性などについて述べたものである。
(ⅰ)分散制御光ファイバについて述べた次のA~Cの文章は、【Aのみ正しい】
Aノンゼロ分散シフト光ファイバは、使用波長である1.55μm近傍にゼロ分散波長をシフトさせつつ、使用波長帯域内では波長分散値をゼロとしない光ファイバである。
B分散マネジメント光ファイバは、光ファイバの長手方向にゼロ分散波長が1.31μmの区間と1.55μmの区間を設けることにより、局所的な波長分散は非ゼロとしながらも伝送路全体で累積波長分散を低減した光ファイバである。
C分散フラット光ファイバは、光ファイバの単位長さ当たりの損失を調整することにより材料分散と構造分散を相殺して分散スロープをフラット【ゼロ】に近づけ、広い波長帯域において波長分散値を小さくした光ファイバである。
メモ:
H27第二回問3 類似問題
分散マネジメント光ファイバは、光ファイバの長手方向に逆の分散特性を持つ二つの光ファイバを組み合わせることにより分散の影響を相殺する。局所的な分散波長を非ゼロにすることで非線形光学効果による劣化を防いでいる。
分散フラット光ファイバは、光ファイバの屈折率分布を制御して材料分散とは符号の反転した導波路分散を形成することにより、広い帯域にわたり分散スロープをゼロに近づけた光ファイバである。
導波路分散=構造分散
(ⅱ)光ファイバ通信で使用される光ファイバの損失特性などについて述べた次の文章のうち、誤っているものは、【③】である。
①紫外吸収損失及び赤外吸収損失は、光のエネルギーが光ファイバの物質中の電子や原子の運動に変換されることによって発生する。これらの損失は、一般に、光ファイバ通信で用いられる波長1.31μmや1.55μmの光の損失特性に対しては、影響が小さい。
②光ファイバ固有の損失は、光ファイバの長手方向に均等に分布しており、その単位にはdB/kmが用いられる。これは、光が1km進んだときの光の減衰量をデシベルで表したものであり損失係数といわれる。例えば、0.2dB/kmの損失を持つ光ファイバは50kmで10dBの損失があり、光パワーは1/10に減衰する。
③材料固有の散乱損失であるレイリー散乱損失は、光ファイバ製造時に高温状態から固化する際に生ずる微小なクラック【密度揺らぎ】が原因で発生し、短波長側の損失特性において支配的である。ブリルアン散乱なども散乱損失に含まれるが、レイリー散乱と比較して微弱であるため、光ファイバの損失特性に対しては、影響が小さい。
メモ:
クラック=傷
④外的要因による散乱損失には、コアとクラッドの境界の揺らぎ、光ファイバ長手方向の軸の揺らぎなど構造不整による損失がある。この損失は、伝搬する光が散乱されることによって生ずる放射損失である。
(ⅲ)四光波混合又は自己位相変調について述べた次の文章のうち、正しいものは、【②】である。
①四光波混合は、二つ以上、一般には三つの異なった波長の光が同時に光ファイバ中に入射した際に、それらのどの波長とも一致しない新たな波長の光が発生する現象であり、入射した光の波長がゼロ分散波長から離れている【等間隔である】ほど発生しやすくなる。
②WDM方式では、四光波混合が伝送品質の劣化要因となるため、その対策として、波長間隔を不等間隔に配置する方法、NZ-DSFなどを用いてゼロ分散でない波長域を利用する方法などが採られている。
③自己位相変調は、光ファイバ中を伝搬する光が、その光自身の強度に起因する屈折率変化により、位相変調を受ける現象であり、光強度に依存して光ファイバの屈折率が変化する現象は、ファラデー【光カー】効果といわれる。
④異常分散領域にある波長の光パルスが光ファイバ中を伝搬するとき、自己位相変調によるパルスが広がる【狭まる】効果と波長分散によるパルスが狭まる【広まる】効果とが相殺され、光パルスが元の波形を維持したまま光ファイバ中を長距離にわたり伝搬する現象は、光ソリトンといわれる。
(ⅳ)誘導ラマン散乱又は誘導ブリルアン散乱について述べた次の文章のうち、誤っているものは、【④】である。
①誘導ラマン散乱は、光ファイバに強いポンプ光が入射されると、ポンプ光とは異なる波長のストークス光といわれる光が成長し、ポンプ光のエネルギーの
大部分がストークス光になる現象であり、信号光がストークス光と同じ帯域内にあると、この信号光は増幅される。
②誘導ラマン散乱は、ポンプ光と光学フォノンとの相互作用により発生する散乱であり、前方散乱光と後方散乱光が同じ程度に発生する。
③誘導ブリルアン散乱は、ポンプ光と音響フォノンとの相互作用により発生する散乱であり、後方散乱光のみが強く発生する。
④【誘導ラマン散乱】による光増幅効果は、一般に、【誘導ブリルアン散乱】による光増幅効果と比較して低いが、増幅可能な帯域幅が広いことから、広帯域な光ファイバ通信システムに広く用いられている。

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