H30第2回-通信線路-問4 電気通信主任技術者(線路)

(1) 次の文章は、光ファイバ通信システムの基本構成について述べたものである。
光ファイバ通信システムは、光アクセスシステムと光中継システムに大別される。光アクセスシステムのネットワークトポロジは、設備センタとユーザ間を1対1で結ぶSS方式、設備センタとユーザ間に【光スプリッタ】を設置し、光ファイバを分岐することにより複数のユーザに接続するPDS方式、及び【光スプリッタ】の代わりに電気的手段によりユーザ信号を多重化する装置などを設置した【ADS】方式に分類される。
光中継システムは、一般に、光送受信装置、光ファイバケーブル及び中継器で構成される。
送信側の光送信装置には、複数のデジタル信号を束ねる多重化装置と多重化された電気信号を光信号に変換する光送信器が設置され、光送信器に光の誘導放出現象を利用した【半導体レーザ】が用いられる。
受信側の光受信装置は、光信号を電気信号に変換するO/E変換器と多重化された信号を元に戻す分離装置で構成される。
伝送区間が長距離となり、雑音やひずみなどの影響により信号の識別が困難な状況になると、中継器が設置される。中継器で光信号を電気信号に変換し、再生後に光信号として送出する方式は再生中継といわれ、この方式には、三つの基本機能が必要となる。その一つである【リタイミング】は、デジタル信号を正確に識別して再生するためのクロックパルスを抽出し、受信パルスを識別する時点を設定する機能である。
メモ:3R機能とは、等化機能(Reshaping)、リタイミング(Retiming)、識別再生(Regenerating)の3つの機能のこと関連 http://tccu.blog.fc2.com/blog-entry-241.html

(2) 次の文章は、架空構造物の設計などについて述べたものである。
(ⅰ) 架空構造物の地上高などについて述べた次の文章のうち、正しいものは、 (①) である。
① 電柱の柱長は、架渉されるケーブルなどの地上高が、総務省令などに規定された必要地上高を確保できるように、根入れ深さ(根入れ長)、頭部余長などを考慮して選定される。
② 電柱などの架空構造物間に架渉されたケーブルなどの弛(たる)みの度合いは、一般に、弛度(ちど)といわれ、弛度は、【最高】温度時に、架渉ケーブルが総務省令などに規定された必要地上高を確保できるように設計されなければならない。
③ 弛度は、【最低】温度時に、甲種風圧荷重又は集中荷重が加わったときでも、吊り線つ又は支持線の強度の安全率が確保できるように設計されなければならない。
④ 弛度が標準より【大きい】と、一般に、張力が標準より小さくなり、吊り線や支持線の切断、支線の破損などに至るおそれが生ずる。

(ⅱ) 架空ケーブルに加わる張力、風圧荷重などについて述べた次の文章のうち、誤っているものは、 (③) である。
① ケーブルを架渉したとき、ケーブルの長手方向に加わる張力T 〔N〕 は、弛度をd〔m〕 、単位長さ当たりのケーブル荷重をW 〔N/m〕 、スパン長をS 〔m〕 とすると、次式で表される。
T=ws^2/8d
② 風向きに対して直角に向いた面の単位面積当たりの風圧荷重をP 〔N/m^2〕 とし、空気の密度をρ 〔kg/m^3〕 及び風速をv 〔m/s〕 とすると、Pは、ρに比例し、かつ、vの2乗に比例する。
③ 風圧荷重は、甲種、乙種及び丙種の3種が定められており、このうち甲種風圧荷重は、鉄筋コンクリート柱においては垂直投影面の風圧が【1470】 Pa 、鋼管柱においてはその の風圧が加わるものとして計算した荷重とすることが総務省令で定められている。
④ 架渉されたケーブルの単位長さ当たりの荷重W 〔N/m〕 は、単位長さ当たりのケーブル重量W〔N/m〕 と風圧荷重Pc 〔N/m〕 の合成荷重となり、次式で表される。
W=√(W^2+Pc^2)


(3) 光 フ ァ イ バ ケ ー ブ ル の 破 断 箇 所 の 探 索 方 法 な ど に つ い て 述 べ た 次 の A ~ C の 文 章 は 、【BCのみ正しい】 。A 破断した光ファイバに光パルスを入射すると、破断箇所での急峻な屈折率変化により【フレネル】反射が生じ、入射した光の一部が入射端に戻ってくる。OTDRは、光が入射端に戻ってくるまでの時間を測定し、距離換算することにより破断箇所を推定できる。
B 光ファイバの破断箇所は、一般に、OTDRを用いて破断の疑いのある箇所を推定し、推定された箇所付近を光ファイバIDテスタ、可視光源などを用いて探索することにより特定される。
C 接続用クロージャ内や光ファイバコードの破断箇所の確認には可視光源として、一般に、赤色LDが使用されている。


(4)石英系光ファイバ及び光ファイバコードの強度、特性などの試験方法について述べた次の文章のうち、誤っているものは、 (③) である。
① 光ファイバの強度は、引張試験、曲げ試験などによって評価される。引張試験及び曲げ試験は、破壊試験であり、この試験を行った光ファイバは実用に供することができないため、一般に、抜取りで行われる。
② 光ファイバのスクリーニング試験は、強度が一定水準以下の光ファイバを取り除くための試験であり、ダンサローラ法、ダブルキャプスタン法などにより、一般に、全数試験が行われる。
③ 光ファイバの疲労特性には、静的疲労特性及び動的疲労特性がある。【動的】疲労特性の測定方法は、光ファイバに一定の応力を与えた状態で放置し、破断するまでの時間を測定するものであり、JISにおいて、光ファイバに一定のおもりをつり下げる方法、引張試験器を用いて破断するまで一定のひずみ率速度で引き伸ばす方法などが規定されている。
メモ:https://kikakurui.com/c6/C6821-1999-02.html
11.曲げによる動的疲労係数測定法 (IEC 60793-1-B7B) 11.1目的  この試験は,一定の平板速度による曲げによって,光ファイバの動的疲労係数を測定するものである。曲げ試験は,実布設の光ファイバに加わる応力が曲げから生じる場合には,引張試験よりむしろこの測定法で評価する。この方法は平板速度を変えることによって光ファイバの疲労特性を評価するものである。この試験は,光ファイバの破断応力の対数と平板速度の対数が線形となる平板速度の場合に適用できる。

④ 光ファイバコードの機械的特性試験は、光ファイバコードに一定の外力を一定時間加えた後に外力を取り除き、光ファイバコードの外観及び光学的な導通状態の確認を行うものであり、JISにおいて、圧壊特性試験、衝撃特性試験などが規定されている。

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