H27第1回-通信線路-問1 電気通信主任技術者(線路)

(1)次の文章は、メタリック伝送線路における減衰量、無ひずみ伝送などについて述べたものである。
減衰量は、二次定数の一つである減衰定数αの大小によって決定される。往復導体の単位長当たりの抵抗とインダクタンスをそれぞれRとL、往復導体間の単位長当たりの漏れコンダクタンスと静電容量をそれぞれGとCとすると、R、L、G及びCは線路の一次定数といわれ、減衰定数αは、これら一次定数から導かれる。
減衰定数αの近似式は、一般に、高周波(30kHz程度以上)の場合、次のように表される。
α≒R/2√(C/L)+G/2√【L/C】
この近似式において、減衰定数αは、R=G=0の場合に零になるが、これは全く減衰しないということで実現するのは不可能であり、【RC=GL】の関係にある場合に最小の値となる。
しかし、実際の伝送路においては、一次定数の関係は、一般に、√【L/C】≪√(R/G)であるため、【RC=GL】の減衰量最小条件を満足することは困難であることから、インダクタンスL
を大きくすることで減衰量を小さくする方法がとられる。
また、減衰量最小条件は、無ひずみ伝送の成立する条件でもあり、伝送に用いる周波数帯域全体にわたり、【特性インピーダンス】が一定であること、減衰定数αが一定であること及び【位相定数】が周波数に比例することが必要である。
(2)次の文章は、メタリック伝送における電気的諸特性、ひずみの種類などについて述べたもので
ある。
(ⅰ)メタリック伝送線路の高周波領域における電気的諸特性について述べた次の文章のうち、誤っているものは、【③】である。
①導体系では、周波数が高くなるに従って抵抗及び内部インダクタンスに変化が生ずる。これは、導体内部において、周波数が高くなるにつれて各部の電流が互いに作用を及ぼしあうことで電流分布が変化した結果であり、一般に、電気的特性として抵抗は増加し、内部インダクタンスは緩やかに減少する。
②近接して平行に並んでいる2本の導体に電流が流れたとき、それぞれの電流が同一方向であると電流が外側に押しやられ、反対方向であると内側に引き合うことで2本の導体の電流密度が変化する現象が生ずる。この現象は、高周波において顕著となり、一般に、近接効果といわれる。
③漏れコンダクタンスは、心線間に加えた電圧に対して絶縁物を通して漏洩する電流の割合を示し、漏れコンダクタンスが小さい【大きい】ほど漏洩する電流が大きく、平衡対ケーブルでは、一般に、周波数が高くなると急激に小さくなる。
④導体を流れる電流が高周波になると、周囲の金属体中に誘起する渦電流によって電力損失を生ずることがあり、その主なものにカッド損がある。
(ⅱ)メタリック伝送におけるひずみの種類、特徴などについて述べた次のA~Cの文章は、【ABが正しい】
A減衰ひずみは、伝送系の減衰量が周波数によって異なるために生ずるひずみであり、音声回線においては、鳴音が発生するなど安定度を低下させる要因となる。
B位相ひずみは、伝送系の位相量が周波数に対して比例関係にないために生ずるひずみであり、群伝搬時間が周波数によって異なるために生ずることから、遅延ひずみともいわれ、データ伝送などにおける伝送品質に大きな影響を及ぼす要因となる。
C非直線ひずみは、伝送系の入力信号と出力信号とが比例関係にないために生ずるひずみであり、ジッタ及びワンダの原因となる。搬送多重回線においては、非直線ひずみによる高調波、混変調波などの発生により、ある通話路からほかの通話路への漏話及び雑音の原因となる。
メモ:
非直線ひずみは、伝送系の入力と出力が比例関係にないために生ずるひずみである。搬送多
重回線においては、非直線ひずみによる高調波及び混変調波の発生により、ある通話路から他の通話路への漏話及び雑音の原因となる。ジッタ、ワンダの原因となるのは位相ひずみ
(3)次の文章は、光ファイバの構造パラメータ、希土類添加光ファイバの特徴などについて述べたものである。
(ⅰ)光ファイバの構造パラメータについて述べた次のA~Cの文章は、【Bのみ正しい】。
A光ファイバの構造を決定するパラメータは、SM光ファイバでは、コア径【モードフィールド径】、モードフィールド偏心量、外径及びカットオフ波長であり、MM光ファイバでは、モードフィールド径【コア径】、外径、開口数及び屈折率分布である。
Bモードフィールド偏心量とは、モードフィールド中心とクラッド中心との距離をいい、モードフィールド中心とコア中心は実質的には同じ場所になるので、モードフィールド偏心量は、一般に、コア中心とクラッド中心との距離として測定される。
Cカットオフ波長とは、高次のモードを遮断する波長をいい、例えば、1.3μmで使用するSM光ファイバにおいては、カットオフ波長は1.3μmよりも短くなければならない。
カットオフ波長より長い波長領域では高次のモードが導波するマルチモード伝搬となり、短い波長領域では基本モードのみが導波するシングルモード伝搬となる。
メモ:
■カットオフ波長とは
 光ファイバのカットオフ波長(Cut-off wavelength)は、あるモードが光ファイバを伝送していけるか遮断されるかの境界となる波長のことです。シングルモード光ファイバでは、伝送波長がカットオフ波長より短くなると基本モードに加え高次モードも伝送できるようになります。このため、カットオフ波長はシングルモード光ファイバの特性を表す重要な指標として使用されます。
(ⅱ)希土類添加光ファイバの特徴などについて述べた次の文章のうち、誤っているものは、【④】である。
①EDFの利得係数はエルビウムの添加濃度を高めることで大きくできるが、高濃度になると濃度消光により励起効率は低下する。
②EDFと伝送用光ファイバのクラッド径及び素線径は同じであるが、EDFのコア径は、増幅性能を向上させるため、一般に、伝送用光ファイバと比較して細くなっている。
③EDFのコアには、増幅動作のためのエルビウムと屈折率プロファイル形成用のゲルマニウムのほか、波長特性平坦化のためのアルミニウムが添加されているものがある。
④光ファイバに異種又は同種の希土類イオンが高濃度に添加されている場合、希土類イオン間でエネルギー移動が起こることがあり、光ファイバの屈折率が変動する【濃度消光や増幅作用の】要因となる。

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