H27第2回-通信線路-問1 電気通信主任技術者(線路)

(1)次の文章は、平衡対ケーブルの一次定数と二次定数について述べたものである。
平衡対ケーブルは、長手方向に均一で一様な線路であり、その電気特性は【分布】定数回路として扱うことができる。
この線路の往復導体の単位長さ当たりの抵抗をR、インダクタンスをLとし、また、往復導体間の単位長さ当たりの漏れコンダクタンスをG、静電容量をCとすると、これらのR、L、G、Cは、線路の一次定数といわれる。
一次定数から誘導される【伝搬】定数γ及び特性インピーダンスZ0は、次式で表される。
H27-1問1
ただし、jは虚数記号を、ωは伝送波の角周波数を、φは特性インピーダンスの偏角をそれぞれ表し、eは自然対数の底とする。
この【伝搬】定数γの式において、実数部αは【減衰】定数、虚数部βは【位相】定数といわれ、これらのγ、α、β、Z0は線路の二次定数と総称される。
(2)次の文章は、複合線路、漏話などについて述べたものである。
(ⅰ)特性の異なる幾つかの線路を縦続接続した複合線路について述べた次の文章のうち、誤っているものは、【②】である。
①複合線路は、特性インピーダンスなどが異なる幾つかの線路を縦続接続することによって構成される線路モデルであり、一様線路と比較して、より現実的な線路に近づけたモデルである。
②複合線路では、一般に、多数の接続点で反射を生ずるが、奇数回の反射により送端側に戻る波は伴流又は続流【逆流】といわれる。
③複合線路の伝送特性を解析することは、一様線路と比較して複雑ではあるが、一様線路の解析手法を基本に、位置角の考え方を採り入れることで容易になる。
④複合線路の任意の点における電圧、電流及びインピーダンスは、位置角をθとすると、一般に、電圧はsinhθに、電流はcoshθに、インピーダンスはtanhθにそれぞれ比例する。
(ⅱ)漏話現象、漏話減衰量などについて述べた次の文章のうち、正しいものは、【③】である。
①二つの回線間の電気的な結合には静電結合と電磁結合があるが、メタリック伝送の音声回線においては、静電結合【電磁結合】の漏話に対する影響は小さく、電磁結合【静電結合】が支配的である。
②静電結合による漏話量は、線路の特性インピーダンスに比例する。したがって、装荷ケーブルは、一般に、無装荷ケーブルと比較して、特性インピーダンスが小さいため、漏話減衰量が大きい【小さい】。
③漏話減衰量LdBは、誘導回線の送端電力PmWと被誘導回線の漏話電力PLmWの比を用いて、次式で表される。
L=10log10 P/PL
④漏話を発生させる側の回線は誘導回線、漏話を受ける側の回線は被誘導回線といわれる。また、被誘導回線において、誘導回線の送端側に生ずる漏話は遠端漏話【近端漏話】、誘導回線の受端側に生ずる漏話は近端漏話【縁端漏話】といわれる。
(3)次の文章は、光ファイバの伝搬特性、光通信における信号劣化要因などについて述べたものである。
(ⅰ)光ファイバの伝搬特性について述べた次の文章のうち、正しいものは、【①】である。
①光ファイバで伝搬可能なモード数を構造パラメータから求めるには、規格化周波数Vが用いられ、空気中の光の波長をλ、コアの半径をa、コアの屈折率をn1、クラッドの屈折率をn2とすると、Vは次式で表すことができる。
V=2πa/λ×√(n1^2-n2^2)
②SI型光ファイバにおいては、コアとクラッドの境界面を臨界角よりも小さな角度で反射しながら進む光波が存在するが、この光波が光ファイバの伝搬モードになるためには、コアの中心軸に直交する方向の位相変化量が、光波の1往復に伴って【2π】の整数倍になる必要がある。
③SM光ファイバにおけるモードフィールド径は、光強度分布がガウス型で近似できるとき、光強度(光パワー)が最大値の【1/e^2】(eは自然対数の底)になるところの直径をいう。
④基本モードにおける光強度分布は、コアの中心で最大値となり、中心から離れるに従って小さくなり、ポアソン分布【ガウス分布】で近似することができる。
(ⅱ)光通信における信号劣化要因などについて述べた次のA~Cの文章は、【全て正しい】。
A波長によって伝搬速度が異なることに起因して生ずる分散は、波長分散といわれる。光通信に用いられる光パルスは、厳密には単一の波長ではなく波長の広がりを有しているため、波長によって伝搬時間に差が生ずることから、受信端でパルス幅が広がり、波形が劣化する。
B光ファイバの製造過程では火炎加水分解反応が広く用いられており、光ファイバ中にOH基が混入する場合がある。OH基は光ファイバ中に1ppm程度含まれているだけでも、吸収による伝送損失の増加要因となる。
C信号の時間軸方向の揺らぎにおいて、10Hz以上の揺らぎはジッタ、10Hz未満の揺らぎはワンダといわれ、一般に、ジッタは送受信回路中の電子回路内部の発振周波数の変動などによって発生し、ワンダは伝送路中の光ファイバ長の温度変化による伸縮などによって発生する。

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