H28第2回-通信線路-問2 電気通信主任技術者(線路)

(1)次の文章は、光ファイバの特徴などについて述べたものである。
光通信システムで広く用いられている石英系光ファイバには、低損失、広帯域、無誘導、無漏話などといった特徴がある。
石英系光ファイバの損失は、1.55μm帯で最小となり、この波長帯域は、一般に、【Cバンド】といわれる。例えば、0.2dB/kmの損失値の光ファイバは、信号光を100km伝送した後での光パワーが【1/100】に減衰するが、この損失値は、同軸ケーブル、無線伝送路などと比較すると非常に小さい値である。
さらに、【Cバンド】の周波数帯域幅は約4.4THzに相当しており、石英系光ファイバは広い周波数範囲にわたって低損失である。
平衡対ケーブルなどの金属伝送媒体では、【表皮効果】により周波数の平方根に比例して損失が増加するため、高周波になると伝搬距離が急激に短くなる。
これに対し、光ファイバでは、分散により伝送周波数帯域が決まることから、使用する波長帯や光ファイバの種類を選ぶことによって、長距離にわたり広い伝送周波数帯域を確保することが可能である。
また、光ファイバは、ガラスやプラスチックなどの【誘導体】を伝送媒体として用いていることから、電磁誘導が発生しないため、電力線と同一のケーブルに収容したり、工場内や鉄道沿線などの電磁環境の厳しい場所で使用することも可能である。
(2)次の文章は、光ファイバ、発光及び受光デバイスなどについて述べたものである。
(ⅰ)SM光ファイバの特徴などについて述べた次の文章のうち、正しいものは、【③】である。
①SM光ファイバは、光ファイバ中を伝搬可能な導波モードを一つだけに制限することによって、波長分散【モード分散】による光信号波形の劣化を防止した光ファイバである。
②屈折率分布構造は、光ファイバの寸法や分類を定義するときに用いられるだけでなく、光学特性や伝送特性を決定する重要なパラメータであり、SM光ファイバの屈折率分布構造は、一般に、グレーデッドインデックス型【ステップインデックス型】である。
③偏波モード分散は、理想的な真円構造を保ったSM光ファイバであれば生ずることはないが、実際のSM光ファイバのコア形状には僅かなゆがみが存在することから、高速かつ長距離伝送の場合には問題となる場合がある。
④SM光ファイバの波長分散値の単位には、一般に、ps/nm/kmが用いられる。通常のSM光ファイバの波長分散値は、1.31μm【1.55μm】付近で約17ps/nm/kmであり、伝送損失が最も小さくなる1.55μm【1.31μm】付近ではゼロである。
(ⅱ)光ファイバの添加物の種類とその役割などについて述べた次の文章のうち、誤っているものは、【④】である。
①石英系光ファイバでは、コアとクラッドの屈折率差をより大きくするため、一般に、コアやクラッドに添加物を加えることにより屈折率を制御している。
②石英系光ファイバでは、一般に、コアの屈折率を上げる添加物としてゲルマニウム、リンなどが用いられ、クラッドの屈折率を下げる添加物としてホウ素、フッ素などが用いられる。
③希土類添加光ファイバのコアには、増幅する波長帯に応じて異なる希土類元素が添加され、主な添加物として、1.55μm帯用にはエルビウム、1.4μm帯用にはツリウム、また、1.3μm帯用にはプラセオジムなどが用いられる。
④希土類添加光ファイバのコアには、屈折率分布形成用及び増幅動作用のための添加物のほかに、雑音指数向上のためにアルミニウム【エルビウム】が添加されているものがある。
(ⅲ)光ファイバ通信に用いられる発光デバイスについて述べた次の文章のうち、正しいものは、【③】である。
①LEDは、LDと比較して、変調可能帯域が広く発光スペクトル幅が狭いが【広く】、駆動回路が簡単で製造コストが安いため、プラスチック光ファイバ、MM光ファイバを使用した低速度の近距離通信などに用いられている。
②LEDの発光中心波長は、半導体の共振器構造を変えることによって変化させることができる。また、発光中心波長は、電流値と温度によっても変化し、一般に、電流値を上げると長波長【短波長】側にシフトし、温度を上げると短波長【長波長】側にシフトする。
③LDの出力光強度を数GHz以上で直接変調する場合には、一般に、ファブリペロー型LDは多モードで発振するようになり伝送距離が制限されることから、高速変調時でも単一モードで発振する分布帰還型LDや分布反射型LDが用いられる。
④LDは、LEDと比較して、発光面積が小さく放射角も小さいため、光ファイバとの結合効率が悪く【良く】、また、電気から光への変換効率も低い【高い】。
(ⅳ)光ファイバ通信に用いられる受光デバイスについて述べた次のA~Cの文章は、【ABが正しい】
A PIN-PDの量子効率及び応答速度は、P層とN層の間に挟まれたI層の厚さによって変化し、一般に、I層を厚くすると量子効率は向上するが応答速度は低下する。このため、I層の厚さは、量子効率、応答速度、必要となる逆バイアス電圧などを考慮して決定される。
B APDは、PIN-PDと比較して、受信感度は高いが、構造が複雑で高い逆バイアス電圧を必要とし、信号出力を増倍する過程で生ずる雑音が問題になる場合がある。
メモ:
APD:アバランシェフォトダイオード
C 受光素子は能動素子【受動素子】であるため、通常の使用条件下では、周波数特性、量子効率などの経時劣化を考慮する必要があり、発光素子と比較して、信頼性が低い。

コメント