H28第2回-通信線路-問4 電気通信主任技術者(線路)

(1)次の文章は、光ファイバ通信システムにおける損失補償及び分散補償について述べたものである。
光ファイバ増幅器を用いた光通信システムにおいては、光ファイバの損失による信号光パワーの低下は光ファイバ増幅器で補償されて回復するが、SN比は劣化する。
信号光が光ァイバ増幅器をm台通過した後のSN比は、光ファイバ増幅器の雑音指数をNFとすると、【10log10mNF】dB劣化する。これが光ファイバ増幅器で損失補償を行っても、伝送距離を無限に延ばすことができない要因の一つである。
波長分散は、一般に、伝送用光ファイバと逆の分散特性を持つ光デバイスなどを挿入することで補償される。
光ファイバ通信システムでは、一般的に使用する1.55μm帯の信号光は、ゼロ分散波長である1.31μmより長波長側の【異常分散】領域にあり、長距離伝送時には波長分散が伝送特性の劣化要因となることから、伝送用光ファイバとは逆の分散値を持つ光ファイバである【DCF】を周期的に挿入するなどして波長分散の累積をゼロに近づけている。
光ファイバ増幅器と分散補償器によって長距離伝送が可能となるが、実際の光ファイバ通信システムでは、光ファイバの非線形現象による波形劣化も問題となる。
波形劣化をもたらす非線形現象の一つに、信号光が光ファイバ中を伝搬するとき、自分自身の強度に起因する屈折率変化によって位相がシフトする【自己位相変調】現象がある。
(2)次の文章は、架空構造物、支線の種類などについて述べたものである。
(ⅰ)架空構造物について述べた次のA~Cの文章は、【Bのみ正しい】
A架空構造物は、電柱、クロージャ、吊り線、支持線、支線、金物類などで構成され、これらは、電気通信関連の法令において配線系設備【支持物】として定義されている。
B支柱は、支線が取り付けられない場合に、一般に、支線の取付け方向とは反対側に取り付けられ、本柱(支柱を取り付ける電柱をいう。)に作用する水平荷重を分担する。支柱には、一般に、本柱と同一設計荷重の電柱が使用される。
Cコンクリート柱は、JIS規格において、1種及び2種に分類され、1種【2種】コンクリート柱は鉄道、軌道における電線路などの用途に、また、2種【1種】コンクリート柱は通信、配電、送電などの用途に使用される。
(ⅱ)支線の種類、支線と電柱の荷重分担割合などについて述べた次の文章のうち、誤っているものは、【②】である。
①支線は、吊り線、支持線などから電柱に加わる水平荷重に対抗して、電柱の傾斜や転倒を防止するために取り付けられるワイヤであり、電柱に取り付ける上部支線及び地下に埋設して地耐力を得る下部支線で構成される。
②曲柱に取り付けられる支線は引留支線【片支線】、線路の起点や終点の電柱に取り付けられる支線は片支線【引留支線】といわれ、これら支線の取付け角度(支線角度)は、一般に、35度~45度であり、積雪地帯では雪の沈降力を考慮して45【35】度となっている。
③上部支線の種別は、支線が分担する荷重、支線角度などによって決定され、下部支線の種別は、上部支線の種別、設置場所の土質などによって決定される。下部支線を地中で固定する部材としては、一般に、普通土質では支線アンカが使用され、軟弱性土質では支線ブロックが使用される。
④支線が取り付けられた単独柱に加わる水平荷重は、一般に、支線が90%、電柱が10%の割合で分担する。この分担割合は、支線の代わりに支柱を用いた場合でも同じである。
(ⅲ)電柱の構造、耐力、基礎地盤支持力などについて述べた次の文章のうち、正しいものは、【③】である。
①電柱の直径増加率はテーパといわれ、テーパαは、電柱の末口をD、元口をD’、長さをLとすると、次式で求められ、一般に、コンクリート柱のテーパは、鋼管柱と比較して大きく【1/75で同じと】なっている。
α=(D-D’)【D´ーD】/L
②電柱には、吊り線、支持線などによる水平荷重が加わるため、電柱の元口を支点に曲げモーメントが作用する。そのため、電柱は、最も強度が要求される箇所を元口【地際部】として構造が決定されている。
③コンクリート柱は、JIS規格において、所定のひび割れ試験荷重を加えたとき、幅0.25mmを超えるひび割れが発生してはならず、ひび割れ試験荷重を除荷したとき幅0.05mmを超えるひび割れが残留してはならないとされている。
一方、鋼管柱では、コンクリート柱と同じひび割れ試験荷重を加えても、ひび割れは発生しないため、塗装の剝がれ、座屈の有無などで合否を判定する。
④電柱の傾斜又は転倒は、基礎地盤支持力が弱く、電柱の水平荷重による曲げモーメントを根入れ部分の抵抗モーメントで支えきれない場合に発生する。そのため、基礎地盤支持力を判定する基準として、一般に、電柱が折損する直前の曲げ【極限抵抗】モーメントに安全率を考慮して求めた値が用いられる。
(ⅳ)コンクリート柱の劣化、非破壊検査方法などについて述べた次のA~Cの文章は、【BCが正しい】
Aコンクリート柱に過大な不平衡荷重が加わると、一般に、【横】ひび割れが発生する。【横】ひび割れが発生すると、電柱の種類によっては鉄筋が破断して折損に至る場合がある。
B沿岸地域に設置されたコンクリート柱の表面に海から運ばれた塩分が付着すると、塩分がコンクリートのひび割れなどを通して内部に浸透し、鉄筋が腐食膨張してコンクリートが剝落する場合がある。
C目視では確認できないコンクリート柱のひび割れ、鉄筋の破断などの検査は、非破壊で行われる。非破壊検査法には超音波法、渦流探傷法などがあり、一般に、コンクリート柱の地下部分のひび割れ検査には超音波法、鉄筋の破断検査には渦流探傷法を採用した測定器が用いられる。

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