H30第1回-通信線路-問1 電気通信主任技術者(線路)

(1)次の文章は、一様線路について述べたものである。
伝送線路として最も基本的な2本の平行導体からなる一様線路においては、抵抗、インダクタンス、静電容量などが線路に沿って一様に存在していると考えられ、このような線路を【分布定数】回路として扱うことができる。
線路上の任意の点xにおける電圧V(x)及び電流I(x)は、自然対数の底をe、特性インピーダンスをZ、端末条件により定まる積分定数をA及びBとすれば、次式で表すことができる。
H30-1一様線路数式
ここで、γは【伝搬】定数といわれる。γは一般に複素数であり、減衰定数をα、位相定数をβ、虚数記号をjとすると、γ=α+jβと表すことができる。
正弦波が線路上を進行していく場合、角速度をω、任意の点xの任意の時間tにおける電圧と電流をそれぞれv(x,t)及びi(x,t)とすると、
H30-1一様線路と時間の数式
となり、位相がx、tの関数となっていることを示しており、同一位相の点が進む速度をuとすれば、u=【ω/β】であり、uは位相速度といわれる。
また、特性インピーダンスZの線路をインピーダンスZで終端したとき、終端点における電圧反射係数Γ(大文字ガンマ)は、Γ=【Z-Z0/Z+Z0】となる。
(2)次の文章は、光の位相速度及び群速度、光ファイバの添加物の種類、光カプラの構造と特性、光パッシブデバイスなどについて述べたものである。
(ⅰ)光ファイバ中を伝搬する光の位相速度及び群速度などについて述べた次の文章のうち、誤っているものは、(④)である。
①真空中の光の速度をc、媒質の屈折率をnとすると、媒質中を伝わる光の速度は、C/Nとなり、この速度は、光の位相が伝わる速さである。一方、周波数が異なる複数の波の集まりである波束が伝わる速度、すなわちパルスの包絡線が伝わる速度は、群速度といわれる。
②光ファイバ中を伝搬する光の群速度をVとすると、以下の関係が成り立つ。ただし、βは伝搬定数、ωは角速度、nは屈折率、cは真空中の光の速度とする。
1/Vg=dβ/dω、β=ωn/c
③最も基本的なモードとなるLP01モードは、周波数が低くなると、電磁界が広がりクラッドの影響を受けて位相速度が速くなる。逆に、周波数が高くなると、電磁界がコアに集中して位相速度は遅くなり、コアの屈折率で決まる速度に収束する。
④光の平面波が均一な媒質中を伝搬する場合には、一般に、光信号の群速度は光の伝搬速度の2乗に比例し、群速度と位相速度との積は媒質中の光の伝搬速度と等しい。
メモ:
群速度≒位相速度≒光の伝搬速度≒光速
(ⅱ)光ファイバの添加物の種類とその役割などについて述べた次の文章のうち、誤っているもの
は、(①)である。
①希土類添加光ファイバのコアには、屈折率分布形成用及び増幅動作用のための添加物のほかに、雑音指数向上のために【エルビウム】が添加されているものがある。
②希土類添加光ファイバのコアには、増幅する波長帯に応じて異なる希土類元素が添加され、主な添加物として、1.55μm帯用にはエルビウム、1.4μm帯用にはツリウム、また、1.3μm帯用にはプラセオジムなどが用いられる。
③石英系光ファイバでは、コアとクラッドの屈折率差をより大きくするため、一般に、コアやクラッドに添加物を加えることにより屈折率を制御している。
④石英系光ファイバでは、一般に、コアの屈折率を上げる添加物としてゲルマニウム、リンなどが用いられ、クラッドの屈折率を下げる添加物としてホウ素、フッ素などが用いられる。
(ⅲ)光カプラの構造と特性などについて述べた次の文章のうち、正しいものは、(②)である。
①光信号を結合又は分岐するための基本デバイスである光カプラは、一般に、バルク型、プレーナ光波回路型及びファイバ型に分類される。【バルク型】は、レンズ、ミラーなどにより構成され、安定性の点で、【プレーナ光波回路型】やファイバ型と比較して劣るが、フィルタなどの光デバイスを挿入し、高機能化を図ることが容易である。
②プレーナ光波回路型の2入力2出力光カプラは、光信号の結合又は分岐の機能を持つ最も基本的な光デバイスであり、2本の光導波路は数μmの間隔にまで近接しており、光導波路中の光信号は相互に作用しながら伝搬する。結合比は、2本の光導波路の結合部の間隔と長さの設計により、調整が可能である。
③ファイバ型光カプラには研磨型と融着延伸型があり、いずれの型も2本のファイバのコアを近接させてコアを伝搬する光波の【モード結合】を利用することにより光信号を結合又は分岐している。
④融着延伸型光カプラは、複数本の光ファイバを並べて融着及び延伸して双円錐状すいのテーパを形成したものである。【融着部】はコア径が細くなっているため、入射した光の閉じ込めが強くなり、他方の光ファイバに光パワーが移行して伝搬モード間に結合が生じ、結合比は入射光のパワーによって変化する。
メモ:
光カプラは、1本の光ファイバーを伝搬してきた光パワーをn個の光ファイバーに分岐したり、あるいは逆にn個の光ファイバーからの光パワーを1本の光ファイバーに結合する機能をもつ電源不要の光デバイスです。光分岐や結合器とも言われます。
プレーナ光波回路(PLC)は、小型で極めて低損失な平面集積回路です。PLCの基本回路である光スプリッタやアレイ導波路格子(AWG)波長フィルタは、現在の光ネットワークで広く用いられている。
光カプラ3パターン
(a)バルク(空間)
(b)プレーナ
(c)ファイバ
(ⅳ)光アイソレータの特性などについて述べた次のA~Cの文章は、【ABが正しい】。
A光アイソレータは、光を一方向にのみ透過させることができる光デバイスであり、半導体レーザ(LD)モジュールにおいて、戻り光による雑音増加を抑えて発振を安定させるために用いられる。
B光ファイバ増幅器の内部や外部での反射による発振を抑止しASE雑音の増大を防止するために用いられる光アイソレータは、一般に、光ファイバ増幅器の入出力端に配置される。
C光アイソレータの能力は、光の伝搬と逆方向における透過損失と、順方向における挿入損失の差であるアイソレーションによって表され、アイソレーションが【大きい】ほどアイソレータとしての能力は高い。

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