H27第2回-通信線路-問2 電気通信主任技術者(線路)

(1)次の文章は、光ファイバグレーティング(FG)について述べたものである。
ゲルマニウムを添加した石英に、波長240nm近傍の紫外線を照射すると【屈折率】が上昇する。FGは、この現象を利用して光ファイバのコア上に、周期的な【屈折率】変化を形成することにより光フィルタなどとしての機能を持たせた光ファイバ型デバイスであり、非破壊で、直接、光ファイバ中にグレーティングを形成できるため、同様の機能を有する誘電体多層膜フィルタと比較して、小型で低挿入損失である、伝送用光ファイバとの良好な接続性が得られるなどの特徴がある。
FGは、グレーティング周期が1μm以下の短周期型及び数十μm~数百μmの長周期型の2種類に大別される。
短周期型FGは、特定の波長の光を選択的に信号光とは逆方向の伝搬モードに結合、すなわち【反射】させることから、狭帯域波長フィルタとして機能する。一方、長周期型FGは、特定の波長の光を信号光と同一方向に進む【クラッド】モードに結合させる。【クラッド】モードに結合した光は光ファイバ被覆材に吸収されて減衰することから、透過阻止型の波長フィルタとして機能する。
短周期型FGは急峻な波長選択特性を持つデバイスであるため、特定の信号波長を分岐・挿入する【OADM】などで、また、長周期型FGはEDFAの利得等化器などで用いられている。
メモ:
光分岐挿入(OADM(Optical Add Drop Multi-plexing))とは、WDMで多重された複数の波長を波長単位で分岐・挿入すること。
(2)次の文章は、光の性質、発光・受光素子と光ファイバとの結合、光ファイバにおける非線形光学効果などについて述べたものである。
光の性質などについて述べた次のA~Cの文章は、【BCが正しい】。
A光の波長に近い大きさの微粒子を含む透明な媒質に白色光を入射させると、入射側に近いところでは青い光が散乱し、残った赤い光が伝搬する。この現象はレイリー散乱といわれ、散乱による損失の大きさは波長の2乗に比例【4乗に反比例】する。
B光の吸収は、一般に、任意の波長の光が伝搬媒質中に存在する物質によって吸収されて熱に変換される現象であり、光ファイバ中における吸収には、石英ガラス自体が持つ紫外吸収及び赤外吸収のほか、コアとクラッド間に屈折率差を設けるために添加される金属イオンなどによる不純物吸収がある。
C光のコヒーレンス性は、周波数軸上のスペクトル分布を測定することにより確認することができる。周波数軸上のスペクトル幅は、一般に、周波数や位相がそろったコヒーレンス性が高い光は1本の線状で狭く、また、周波数や位相がそろっていないコヒーレンス性が低い光は広がって観測される。
(2)発光・受光素子と光ファイバとの結合などについて述べた次の文章のうち、正しいものは、【②】である。
<(カ)の解答群>
①LDとLEDとでは、発光源から出射される光ビームの広がり度合いが異なり、光ビームの広がり度合いが大きいLEDの方が、光ファイバとの結合損失は小さい【大きい】。
②LDは自分自身の反射光によって発振が不安定になる特性があり、高速伝送方式ではこの影響を無視できないため、LDと光ファイバの間には、一般に、反射光の帰還を阻止する光アイソレータが組み込まれている。
③発光素子から出射される光は屈折や回折により広がることから、発光素子と光ファイバとは、一般に、YAGレーザを用いて融着接続【溶接】されている。
④光ファイバ中を伝搬してきた光は、石英ガラスの分散特性に応じて【屈折現象によって】端面から広がって放射されることから、光ファイバと受光素子との結合損失を小さくするために、レンズを用いて光の絞り込みを行うなどの工夫がなされている。
(ⅲ)光ファイバにおける波長分散、自己位相変調などについて述べた次の文章のうち、誤っているものは、【④】である。
①光ファイバの波長分散は、ゼロ分散波長より短波長側の正常分散領域と長波長側の異常分散領域に分けられ、光パルス信号のスペクトルが正常分散領域にあるときは、波長が長いスペクトル成分ほど群速度は速くなる。
②光パルスの波長が時間的に変化する現象は、一般に、チャーピングといわれ、光パルスは時間的な波形広がりを伴うため、符号間干渉を生ずる原因となる。
③波長分散によるパルスの広がりと自己位相変調によるパルスの狭まりとが打ち消し合った状態では、光パルスがパルス幅を変えずに伝搬する光ソリトン現象が発生する。
④入射する光信号の強度に依存して光ファイバの屈折率が変化する現象は、光カー効果といわれ、自己位相変調は、この光カー効果により光強度の変化に比例して入射した光と同じ波長の光が散乱される【屈折率が変化するため、媒質中で光の位相速度が変化する】現象をいう。
(ⅳ)光ファイバにおける非線形光学効果などについて述べた次のA~Cの文章は、【Bのみ正しい】。
A非線形光学効果は、非線形屈折率変化と非線形散乱【誘導散乱】とに大別でき、前者には波長分散、四光波混合などが、また、後者には誘導ラマン散乱及び誘導ブリルアン散乱がある。
B四光波混合は、二つ以上の異なった波長の光が同時に光ファイバ中に入射したとき、それらのどの波長とも一致しない新たな波長の光が発生する現象である。
C誘導ラマン散乱は、強い光が光ファイバ中に入射したとき、ガラスを構成する分子の光学的振動と入射光との相互作用が原因で発生する現象であり、後方散乱光のみ【前方散乱光と後方散乱光】が発生する。

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