H29第1回-通信線路-問4 電気通信主任技術者(線路)

(1)次の文章は、架空ケーブルのダンシングの原因とその対策などについて述べたものである。
架空ケーブルのダンシングとは、風によってケーブルに【揚力】が生じ、ケーブル自体のねじれ振動と相乗して一種の自励振動が発生する現象をいい、一般に、ケーブル部の外径が同じ場合、丸形ケーブルより、受風面積が大きい自己支持型ケーブルで発生しやすい。
また、ダンシングは、ケーブルの形状のほか、重量と架渉張力にも関係があり、架渉されたケーブルが【軽くて弛度が大きい】ほど発生しやすくなる。
ダンシングの防止策には、架渉したケーブルに捻回を入れる方法、ケーブルの支持間隔を短くする方法などがある。ケーブルに捻回を入れる方法では、約10mに1回の割合で捻回を入れることにより、風圧によるケーブルの上昇力と下降力が平衡してダンシングの発生を抑制できるとともに、ケーブルに働く【水平風圧荷重】も減少させることができる。
ダンシングは、ケーブルの構造を変えることによっても抑制することができ、自己支持型ケーブルの支持線部とケーブル部をつなぐ首部に窓を開けた、一般に、【SSW】型といわれるケーブルは、開けた窓から風を逃して風に対する抵抗を小さくすることでダンシングが起こりにくくしている。
(2)次の文章は、光ファイバケーブルの特徴、凍結などによる通信線路設備への影響とその対策などについて述べたものである。
(ⅰ)光ファイバケーブルの特徴などについて述べた次の文章のうち、誤っているものは、【③】である。
①スロットの構造をSZ撚りとしたテープスロット型光ケーブルは、ケーブルの途中において、ケーブルを切断することなく、光テープ心線の取り出しや接続余長の確保が容易な構造であり、中間後分岐に適している。
②ノンメタリック型光ドロップケーブルは、一般に、支持線部には鋼線、ケーブル部のテンションメンバにはFRPが用いられており、支持線部は引留具などに引き留められた後に切断されるため、落雷などによるサージ電流が宅内へ侵入することを防止できることから、ケーブル部を直接ユーザ宅内に引き込むことが可能である。
③難燃シース光ケーブルは、難燃性の材料をシースに用いたケーブルであり、難燃性は、一般に、低難燃性及び高難燃性に分けられる。低難燃性のケーブルは、JISなどに規定する方法で燃焼試験を行い、炎にさらされても60秒間は着火しない【60秒以内に自然に消える】性能を有している。
④OPGW(OpticalGroundWire)は、送電鉄塔などの一番上に、主に、避雷用として布設された架空地線(GroundWire)の内部に光ファイバを収容したケーブルである。
架空地線は、短絡事故などにより大電流が流れ高温になる場合があることから、OPGWの光ファイバ被覆材料には耐熱性に優れたシリコンなどが使用されている。
(ⅱ)凍結などによる通信線路設備への影響とその対策などについて述べた次の文章のうち、誤っているものは、【②】である。
①寒冷地において、橋梁添架、スラブ下越し、ケーブル引上げ点などで管路が大気中に露出している箇所では、管路内に溜水があると、凍結時に水の体積が膨張し、管路内のケーブルに座屈、圧壊などが発生する場合がある。
②管路内での溜水の凍結圧によるケーブルの座屈、圧壊などを防止する方法には、管路に一定間隔でドレーンパイプ【排水枡】を接続する方法、管路内にケーブルと一緒にPEパイプを挿入しておき凍結圧をPEパイプで吸収する方法などがある。
③極寒地において、凍上現象による地下管路の被害を防止するには、管路を埋設する場所の土に砂を多く混ぜ込み凍上を抑制する方法、地表面からの温度変化の影響を受けにくい深さに埋設する方法などがある。
④剛性の大きい金属製の地下管路を布設する場合には、温度変化により管路が伸縮し、MHダクト口から突き出すことや引き抜けることがあるため、一般に、温度伸縮量を吸収するための伸縮継手が一定間隔で配置される。
(ⅲ)地下ケーブル、橋梁添架ケーブルなどにおけるクリーピングとその対策について述べた次のA~Cの文章は、【全て正しい】。
Aクリーピングは、ケーブルの温度伸縮、車両の通行に起因する振動などにより、ケーブルに移動力が生ずることによって発生する。光ファイバケーブルは、一般に、メタリックケーブルと比較して、クリーピングが発生しやすいが、その移動力は小さい。
Bクリーピングは、地盤が軟弱で大型車両の通行が多い傾斜地の道路、路面の凸凹が著しい直線道路などの地下管路内で発生しやすく、ケーブルが移動する方向は、傾斜、ケーブルと管路との摩擦力、車両の進行方向など設置環境により異なる。
Cクリーピングの対策として、ケーブル移動防止金物で機械的にケーブルの移動を止める方法、移動量に応じたスラックを設ける方法、ケーブルを細径化する方法などが有効である。
(ⅳ)ケーブルの非ガス保守などについて述べた次の文章のうち、正しいものは、【④】である。
①非ガス保守方式で用いられるWBケーブルは、ケーブル外被の損傷などにより水が浸入すると、WBテープの吸水剤が水を吸って膨張することでケーブル内に止水ダムを形成し水走りを防止できるため、浸水しても設計寿命までは取り替える必要が【ある】。
②浸水検知モジュールは、吸水膨張材、可動体、曲げ付与部などから構成され、一般に、管路内の水が滞留しやすい箇所【クロージャ内】に設置され、水が浸入すると吸水膨張材が可動部を押し上げることで光ファイバに曲げを与え、曲げ損失を発生させる。
③浸水検知モジュールで発生した曲げ損失はOTDRで測定され、浸水箇所が特定される。OTDR測定は、一般に、現用【専用】の光ファイバが使用され、サービスに影響がないように、270Hzで変調された現用回線より長波長の試験光で行われる。
④光ファイバケーブルを浸水したまま長期間放置すると、乾燥状態と比較して、破断確率が10倍以上となることから、浸水の有無を測定する時間間隔は、一般に、光ファイバの浸水期間と破断確率の関係、浸水の発見から修理完了までの期間などを考慮して決
定される。

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