H28第2回-通信線路-問1 電気通信主任技術者(線路)

(1)メタリックケーブルを用いたアナログ伝送系における雑音は、一般に、伝送系内部で発生する雑音と外部から侵入する雑音に分けられ、さらに、伝送系内部で発生する雑音は、信号を伝送していない場合でも存在する基本雑音と信号伝送に伴って発生する【準漏話】雑音とに分けることができる。
基本雑音は、通話の有無と無関係であることから、信号レベルの低いところで問題となり、一般に、大きな妨害になるものは増幅器で発生する雑音であり、その主な成分の一つは、周波数に対して一様に分布している【熱】雑音である。
一方、伝送系の入力側に加えられた信号波形と出力側に現れる信号波形が異なる現象は、ひずみといわれる。このうち、位相ひずみは、伝送系の位相量が周波数に対して比例関係にないため、すなわち【群伝搬時間】が周波数により異なるために生ずるひずみであり、伝送品質に影響を及ぼす。
また、【非直線】ひずみは、伝送系の入力と出力が比例関係にないために生ずるひずみである。伝送路中の増幅器などの【非直線】ひずみによる高調波及び混変調波の発生は、雑音の原因となる。
(2)次の文章は、光通信などに応用されている光の性質、光ファイバにおける損失、劣化要因などについて述べたものである。
(ⅰ)光通信などに応用されている光の性質について述べた次の文章のうち、正しいものは、【③】である。
①光の波動としての性質に干渉がある。同一光源からの光を二つの光路に分け、再び合成したとき、二つの光の位相がそろっているときは【コヒーレント】な光といわれ互いに干渉しあい、二つの光の位相がそろっていないときは【インコヒーレント】な光といわれ互いに干渉しない。光通信には、位相のそろった【コヒーレント】な光が適している。
②直線偏光が物体中を透過するとき、その偏光面が回転する現象は旋光といわれ、直線偏光の進行方向に対し平行な磁界をかけることによって旋光性が現れる現象はポッケルス効果【ファラデー効果】といわれる。光カプラ【光アイソレータ】は、この現象を利用した光デバイスである。
メモ:
類似 H25第二回
③光は互いに直交する電界と磁界によって構成される電磁波の一種であり、光の進行方向と垂直に振動する横波である。電界の振動方向が一定した光は直線偏光、進行とともに電界が回転する光は楕円偏光又は円偏光といわれる。
④屈折率の高い媒質Aから入射した光が屈折率の低い媒質Bとの境界面に沿って進むときの入射光と二つの媒質の境界面の法線とのなす角度はブリュースター角【臨界角】といわれ、入射角がこの角度より大きくなると光は媒質Bに入ることができず全反射する。
メモ:
類似 H24第一回、H25第二回
(ⅱ)光ファイバにおける損失について述べた次のA~Cの文章は、【BCが正しい】
A光ファイバにおけるレイリー散乱損失は、主に短波長側で支配的となる損失であり、光ファイバ製造時に高温状態で固化する際にコアとクラッドの境界面にできる凹凸【密度揺らぎ】が原因で発生する。
メモ:
類似 H29第一回 http://tccu.blog.fc2.com/blog-entry-263.html
B光ファイバを放射線下で使用すると、石英ガラスの構造欠陥が放射線によって生じた電子や正孔を捕捉し、光を吸収することで光損失が増加する。放射線による光損失は、一般に、放射線量が増加すると大きくなり、減少すると小さくなる。
C光ファイバの損失発生の原因の一つとして、水素分子による光の吸収がある。これは、水素分子が光ファイバ中に存在することで生じ、水素分子を取り除くと損失は減少する。水素分子による損失発生の防止策としては、光ファイバ周辺からの水素の発生を抑える、光ファイバ内部への水素分子の拡散を防止するための障壁を設けるなどの方法がある。
(ⅲ)光ファイバにおける伝搬特性について述べた次の文章のうち、誤っているものは、(キ)である。
①光ファイバで伝搬可能なモード数を構造パラメータから求めるには、規格化周波数Vが用いられ、空気中の光の波長をλ、コアの半径をa、コアの屈折率をn1、クラッドの屈折率をn2とすると、Vは次式で表すことができる。
V=2πa/λ×√(n1^2-n2^2)
②基本モードにおける光強度分布は、コアの中心で最大値となり、中心から離れるに従って小さくなり、ガウス型で近似することができる。
③SI型光ファイバにおいては、コアとクラッドの境界面で全反射しながら進む光波が存在するが、この光波が光ファイバの伝搬モードになるためには、コアの中心軸に直交する方向の位相変化量が、光波の1往復に伴って2πの整数倍になる必要がある。
④SM光ファイバにおけるモードフィールド径とは、光強度分布がガウス型で近似できるとき、光強度(光パワー)が最大値の【1/e^2】(eは自然対数の底)になるところの直径をいう。
(ⅳ)石英系光ファイバにおける分散などについて述べた次の文章のうち、正しいものは、【②】である。
①光ファイバの材料であるガラスの屈折率が光の周波数により僅かながら異なるため、光ファイバ中を伝搬する光パルスの幅が狭まる【広まる】現象は分散といわれる。
②光ファイバ中での分散には、材料分散、構造分散、モード分散及び偏波モード分散の四つがあり、このうち材料分散と構造分散の和は波長分散といわれる。
③MM光ファイバにおいては、光ファイバ中を伝搬する各モードの伝搬速度が異なるために生ずるモード分散が、相互位相変調【符号間干渉】を引き起こすため、伝送帯域を制限する主な要因となる。
④SM光ファイバのゼロ分散波長や分散スロープを制御して製作された光ファイバは、総称してフォトニック結晶光ファイバ【分散制御光ファイバ(DCF)】といわれる。
メモ:

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