H27第2回-通信線路-問4 電気通信主任技術者(線路)

(1)次の文章は、OTDRの測定原理などについて述べたものである。
光ファイバに光を入射すると、光ファイバのコアの屈折率分布の不均一性などによって生ずる【レイリー散乱】や、局所的な屈折率の段差などによって生ずる【フレネル反射】により、入射端に向かって微弱な後方散乱光が戻って来る。
OTDRは、後方散乱光を利用した測定器であり、光パルス試験器ともいわれ、被測定光ファイバに入射した光パルス信号の後方散乱光の強度を【時間】領域で測定することにより、光ファイバの損失や距離の測定、破断点の探索などを行うことができる。
後方散乱光のパワーは微弱であるため、実際の測定においては、一般に、光が被測定光ファイバ中を往復する時間より【長い周期】で光パルスを繰り返し送出して測定を行い、それらの測定値を平均化することにより正確度の高い結果を得ることができる。
(2)次の文章は、OTDR、光ファイバIDテスタ、光ファイバの測定などについて述べたものである。
(ⅰ)OTDRについて述べた次の文章のうち、正しいものは、(オ)である。
①OTDRによる光ファイバの接続損失測定において、負の接続損失、すなわち利得があるように見える場合がある。これは、光ファイバの非線形光学効果【径の異なる光ファイバのレイリー後方散乱光レベル差と接続損失】により生ずるものであり、正確な測定結果を得るには、入力する光パルスのパワーを下げて再測定する【上部・下部それぞれから測定し平均値をとる】必要がある。
②OTDRにおけるダイナミックレンジとは、一般に、光出射端近傍の反射光レベルからノイズフロアまでの範囲をいい、測定に用いるパルスの繰り返し間隔を短く【パルス幅を広く】することにより、ダイナミックレンジを大きくすることができるが、分解能は低くなる。
③OTDRにおけるデッドゾーンとは、損失などの測定が正確にできない範囲をいい、損失測定デッドゾーンと反射測定デッドゾーンがある。損失【反射】測定デッドゾーンは、フレネル反射のピーク値から1.5dB下がったレベルまでの範囲と規定されている。
メモ:
OTDRの測定におけるデッドゾーンには、反射測定(フレネル反射)デッドゾーン及び損失測定(後方散乱光)デッドゾーンの2種類がある。反射測定デッドゾーンとはフレネル反射のピークレベルから1.5[dB]での幅をいい、損失測定デッドゾーンとは光コネクタ接続箇所からフレネル反射の影響による応答波形で、真値から±0.5[dB]以下のレベルの箇所までの接続損失などが測定できない幅をいう。
④OTDRによる距離測定では、実際に被測定光ファイバ中を伝搬する光の速度(群速度)に経過時間を乗ずることにより距離を求めている。群速度は光ファイバの群屈折率によって決まることから、測定に際しては、正確な群屈折率を把握しておく必要がある。
(ⅱ)光ファイバIDテスタ(IDテスタ)を用いた、光ファイバ心線対照技術などについて述べた次のA~Cの文章は、【ACが正しい】。
A IDテスタは、光ファイバ心線に曲げを加えることにより漏れ出た試験光を検出し、心線対照を行うものであり、現用信号光とは異なる波長の試験光を使用することにより、現用回線には影響を与えずに心線対照が可能である。
B 光ファイバにおける曲げ損失は、同じ曲げ半径の場合、波長が短い【長い】ほど大きいため、IDテスタでは、一般に、信号光より【長】波長の試験光が用いられる。
C 曲げを加えても光信号が心線外部へ漏洩しにくいR15心線の心線対照には、曲げ部に光ファイバ被覆と同程度の屈折率を持つ透過性部材を用いて漏洩光の検出感度を高めたIDテスタを用いる方法がある。
(ⅲ)MM光ファイバの伝送帯域とその測定法について述べた次の文章のうち、誤っているものは、(キ)である。
①伝送帯域とは、光ファイバがどこまで高い周波数の変調信号を伝送できるかを示すもので、変調周波数0Hzすなわち無変調時を基準として、ベースバンド周波数特性が6dB減衰するまでの範囲の周波数をいう。
②伝送帯域を表す単位としては、一般に、MHz・kmが用いられる。例えば、200MHz・kmの光ファイバという場合は、200MHzで変調された光信号が1km伝搬したとき、光のパワー【光の振幅】が6dB減衰する光ファイバであることを意味している。
③時間領域の測定法の一つであるパルス法は、LDなどからの短パルスレーザ光を被測定光ファイバに入射させ、入射端と出射端における光パルスをそれぞれフーリエ変換し、光ファイバの周波数応答特性から伝送帯域を測定する方法である。
④周波数領域の測定法の一つである周波数掃引法は、正弦波状に強度変調された光信号を被測定光ファイバに入射し、光ファイバからの出射光の変調周波数に対する減衰量から伝送帯域を測定する方法である。
(ⅳ)SM光ファイバの波長分散の測定法について述べた次のA~Cの文章は、【Aのみ正しい】。
A パルス法は、幾つかの異なる波長の光パルスを被測定光ファイバに入射させ、各波長ごとの群遅延時間差を直接測定することにより波長分散を求める方法である。
B 位相法は、パルス法のように群遅延時間差を直接測定するのではなく、幾つかの異なる波長の光信号を、同一の周波数で正弦波変調して被測定光ファイバに入射させ、伝搬後の光信号の屈折率分布を測定して群遅延時間差を算出することにより波長分散を求める方法である。
C OTDR法は、OTDRの機能を応用した測定法であり、測定には、一般に、四つの異なるパワーの光パルスが用いられ、これらの光パルスが遠端で反射して戻って来る波長ごとの非線形光学特性から波長分散を求める方法である。

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