H29第2回-通信線路-問3 電気通信主任技術者(線路)

(1)次の文章は、分散制御光ファイバの種類、機能などについて述べたものである。
光ファイバ製造技術の進歩、高性能な希土類添加光ファイバ増幅器の開発、【WDM】方式の普及などに伴い、目的に応じた波長分散特性を持つ光ファイバが開発・製造されている。
分散シフト光ファイバは、石英系光ファイバの極低損失領域である1.55μm帯で波長分散がゼロとなるように制御された光ファイバであり、屈折率分布を調整することにより、構造分散の【波長依存性】を変化させ、ゼロ分散波長を1.3μm帯から1.55μm帯にシフトさせている。
分散フラット光ファイバは、広い波長範囲で低分散を実現した光ファイバであり、屈折率分布構造により、W型、4重クラッド型などがあり、【WDM】方式などで用いられている。
1.3μm帯でゼロ分散の特性を持つ光ファイバを1.55μm帯で使用すると、約【17】ps/nm/kmの波長分散が生ずる。この波長分散は、伝送用光ファイバの分散特性とは【正負が反対】の分散特性を持つ分散補償光ファイバを接続することにより相殺できるため、既設の光ファイバを1.55μm帯の光ファイバ通信システムで有効利用することができる。
(2)次の文章は、光ファイバケーブルの構造、特徴、融着接続技術、接続部における損失などにつ
いて述べたものである。
光ファイバケーブルの構造などについて述べた次の文章のうち、誤っているものは、【③】である。
①光ファイバケーブルの抗張力体の材料には、鋼線、FRPなどが用いられており、鋼線はFRPと比較してヤング率が大きい。
②光ファイバケーブルは、外力や水などに対する伝送特性の安定、ケーブルの布設や接続の作業の行いやすさ、設備管理のしやすさ、浸水防止などの保守の行いやすさなどの機能を考慮した構造にする必要がある。
③光ファイバケーブルの構造において、【スロット型】は、テープ心線をあらかじめ成型した溝型のスロット内に収容することで高密度の実装が可能となる構造となっている。
④WBケーブルでは、ケーブル内部に吸水剤を含んだWBテープが入れられており、ケーブル外被の損傷などにより生じた浸水が、ケーブル内部に広がることを防止する構造となっている。
(ⅱ)光ファイバ心線、光ファイバケーブル又は光ファイバコードの構造、特徴などについて述べた次の文章のうち、誤っているものは、【①】である。
①光ファイバ心線には、温度特性や機械特性を確保する目的で、多層被覆が施されており、【外層】にはマイクロベンドを防止するために硬い被覆が、また、【内層】には側圧などから光ファイバを保護するために柔らかい被覆が用いられている。
②自己支持形光ファイバケーブルは、光ケーブル部と吊り線が一体となっていることから、光ケーブル部は架涉後も常時伸びひずみを受け続けるため、光ファイバの破断確率が高くなる。このため、吊り線は、架涉張力、温度変化、風圧、着雪などによる光ファイバケーブルの伸びひずみを考慮したものが用いられる。
③タイト型光ファイバケーブルは、光ファイバ心線を抗張力体の周りに集合し、その上に側圧などの外力から光ファイバを保護するための緩衝層などを施した構造である。抗張力体は、布設後の温度変化による光ケーブルの伸縮を抑えて、損失増加防止の役割を果たしている。
④光ファイバコードは、一般に、光ファイバ心線の周囲に抗張力体としてポリアミド系繊維などを密着して配置し、さらに抗張力体上にビニルなどを被覆してシースとした構造であり、光伝送機器内配線、同一フロア内の機器間の接続などに使用される。
(ⅲ)光ファイバの融着接続技術について述べた次のA~Cの文章は、【ABが正しい】
A融着接続機は、一般に、高周波でアーク放電を行い、放電開始時のみ高電圧をトリガ的に加える高周波トリガ方式により光ファイバを加熱溶融し接続している。
B融着接続機は、一般に、光ファイバの融着接続部の強度が光ファイバ心線の強度と比較して低下していないか、一定の張力をかけて強度チェックを行う機能を有している。
C光ファイバの融着接続部は、緩衝層や被覆層が除去されて石英ガラスがむき出しになって接続されているため、一般に、紫外線硬化樹脂【熱収縮補強スリーブ】を用いて補強している。
(ⅳ)光ファイバの接続部における損失、不良などの原因について述べた次の文章のうち、正しいものは、【③】である。
①接続部は屈折率が不均一又は不連続な領域と捉えることができ、伝搬する光の一部が不連続な領域で反射して反対方向に進むことにより生ずる反射光が、反射損失、【レーザ】ダイオードの特性劣化、雑音などの原因となる。
②接続損失の要因には、軸合わせの精度、端面の研磨状況などの接続技術に起因するものと、接続する2本の光ファイバパラメータの相違によるものがある。接続技術に起因するものには光ファイバコアの軸ずれ、軸の傾斜、間隙などがあり、これらのうち【軸ずれ】による損失への影響が最も大きいため、【間隙】を補正するよりも【軸ずれ】を最小限にすることを優先する必要がある。
③光ファイバの融着接続における軸ずれの発生要因としては、光ファイバの被覆除去が不十分であること又は融着接続部のクランプ及びV溝にゴミが付着していることがある。再度融着接続を行う場合は、クランプ及びV溝の清掃並びに光ファイバカッターの切断刃の清掃などを行う必要がある。
④光コネクタにおける損失には、端面突合せ部に生じた微小な間隙に起因し、屈折率の異なる媒質の境界面に生ずる【フレネル反射】による損失がある。

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