H29第2回-通信線路-問2 電気通信主任技術者(線路)

(1)次の文章は、光ファイバにおける非線形光学現象について述べたものである。
光ファイバに高強度の光を入射すると、【屈折率】が光の電界強度の2乗に比例して変化する現象が生ずる。この現象は【光カー効果】といわれ、入射された光自身が誘起した【屈折率】変化によって、光の位相が急激に変化する【自己位相変調】を生じ、この結果、短光パルスのスペクトルに広がりが生ずる。
特に、波長多重伝送など大容量の光伝送において障害となる非線形光学効果として【四光波混合】といわれる現象がある。これは、異なる三つの波長の光が入射されたときに新たな波長の光が生ずる現象で、波長多重伝送では、特定の信号光に干渉して伝送品質の劣化を引き起こす。
(2)次の文章は、光ファイバ伝送における光ファイバへの光の入射、光の性質、MM光ファイバの
周波数特性、信号劣化要因などについて述べたものである。
(ⅰ)光ファイバへの光の入射について述べた次の文章のうち、正しいものは、【③】である。
①光ファイバへの光の入射点では、空気、コア及びクラッドの三つの屈折率の異なる媒質が接しており、空気とコア及びコアとクラッドのそれぞれの境界面での光の屈折及び反射において【スネル】の法則が成り立つ。
②屈折率の異なる二つの媒質Ⅰ及びⅡ(ただし、屈折率は、媒質Ⅰが媒質Ⅱより大きいものとする。)が接した状態で、媒質Ⅰから媒質Ⅱへ光が入射する場合、光が媒質Ⅱに入り込むことなく全反射が生ずるときの入射角は、【臨界角】といわれる。
③光ファイバへの光の入射条件を示す開口数(NA)は、光源と光ファイバの結合効率に影響を与える基本的なパラメータであり、一般に、コア径が同じであればNAの大きな光ファイバほど、また、NAが同じであればコア径の大きな光ファイバほど、結合効率が高い。
④NAは、光ファイバの材料分散【構造】を変化させることにより制御可能であり、一般に、NAが大きい光ファイバほど受光可能な入射角は大きくなる。レンズを用いて効率良く光源からの光を光ファイバに入射させるには、光ファイバのNAがレンズのNAを超えないようにしなければならない。
メモ:
(ⅱ)光の性質などについて述べた次の文章のうち、正しいものは、【④】である。
①電磁波は、電界と磁界が直交して進行し、それぞれの振動方向は進行方向に垂直な横波である。光は、放送や携帯電話に用いられる電波の波長と比較して、非常に【短い】波長の電磁波である。
②回折現象のうち、光源と観測点のいずれか、又は光源と観測点の両方が開口に近く、光の波面の曲率が無視できない回折は、【フレネル】回折といわれる。
③光の波長に近い大きさの微粒子を含む透明な媒質に白色光を入射させると、入射側に近いところでは青い光が散乱し、残った赤い光が伝搬する。この現象はレイリー散乱といわれ、散乱による損失の大きさは波長の【4乗】に比例する。
④光の吸収とは、光の一部が光の伝搬媒体によって吸収され、熱に変換される現象をいい、光ファイバでは石英ガラスが持つ紫外吸収と赤外吸収のほか、添加剤として含まれる金属イオンや水素イオンによる不純物吸収がある。
(ⅲ)MM光ファイバの周波数特性及び伝送帯域について述べた次の文章のうち、正しいものは、【①】である。
①伝送帯域は、ベースバンド周波数特性において、光信号を電気信号に変換した後の振幅が、変調周波数ゼロのときと比較して6dB減衰するまでの周波数の範囲として求めることができる。
②ベースバンド周波数特性は、光ファイバがどこまで高い周波数の変調光信号を伝搬できるかを示すものであり、入射光信号と出射光信号の【振幅比】で表され、一般に、変調周波数が高くなるほど、また、伝送距離が長くなるほど、周波数チャーピングの影響により光信号波形は劣化する。
③GI型光ファイバの伝送帯域はモード分散と波長分散によって制限され、光源にLDを使用する場合には波長分散が、また、LEDを使用する場合にはモード分散が伝送帯域を制限する主な要因である。
④伝送帯域特性は光ファイバのモードフィールド径に依存することから、GI型光ファイバの伝送帯域特性は、一般に、その使用波長で伝送帯域が最大となるようにモードフィールド径が設計される。
(ⅳ)光ファイバ通信における信号劣化要因などについて述べた次のA~Cの文章は、【Cのみ正しい】。
A光伝送路の途中に光コネクタなどの光部品があると、反射によって干渉現象が生ずる。反射光が光源であるLDまで戻り干渉現象によって発振光が不安定になることを防ぐため、【アイソレータ】が用いられる。
B光信号が伝送路を伝わるうちに、自然条件の影響を受け光ファイバが温度変化によって伸縮すると揺らぎを生じ、ビット誤り率を増大させる要因の一つとなる。この揺らぎの周波数が10Hz未満のものは【ワンダ】といわれる。
C線形中継システムでは、信号光とASE光との間のビート雑音は中継器数に比例して増大し、また、ASE光とASE光との間のビート雑音は中継器数の2乗に比例して増大する。

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