H29第2回-通信線路-問1 電気通信主任技術者(線路)

(1)次の文章は、メタリック伝送線路における減衰量、無ひずみ伝送などについて述べたものであ
る。
減衰量は、二次定数の一つである減衰定数αの大小によって決定される。往復導体の単位長当たりの抵抗とインダクタンスをそれぞれRとL、往復導体間の単位長当たりの漏れコンダクタンスと静電容量をそれぞれGとCとすると、R、L、G及びCは線路の一次定数といわれ、減衰定数αは、これら一次定数から導かれる。
減衰定数αの近似式は、一般に、高周波(30kHz程度以上)の場合、次のように表される。
α≒R/2×√C/L+G/2×√【L/C】
この近似式において、減衰定数αは、R=G=0の場合にゼロになるが、これは全く減衰しないということで実現するのは不可能であり、【RC=GL】の関係にある場合に最小の値となる。
しかし、実際の伝送路においては、一次定数の関係は、一般に、√【L/C】≪√R/Gであるため、【RC=GL】の減衰量最小条件を満足することは困難であることから、インダクタンスLを大きくすることで減衰量を小さくする方法がとられる。
また、減衰量最小条件は、無ひずみ伝送の成立する条件でもあり、伝送に用いる周波数帯域全体にわたり、【特性インピーダンス】が一定であること、減衰定数αが一定であること及び【位相定数】が周波数に比例することが必要である。
(2)次の文章は、光ファイバの構造パラメータ、光ファイバの伝搬特性、光ファイバの分散などに
ついて述べたものである。
光ファイバの構造パラメータについて述べた次のA~Cの文章は、【Cのみ正しい】
A光ファイバの構造を決定するパラメータは、SM光ファイバでは、コア径【モードフィールド径】、モードフィールド偏心量、外径及びカットオフ波長であり、MM光ファイバでは、モードフィールド径【コア径】、外径、開口数及び屈折率分布である。
メモ:
https://denki9.exblog.jp/3032306/
カットオフ波長≒遮断波長
https://www.fiberlabs.co.jp/tech-explan/about-cut-off-wavelength/
Bカットオフ波長とは、高次のモードを遮断する波長をいい、例えば、1.3μmで使用するSM光ファイバにおいては、カットオフ波長は1.3μmよりも短くなければならない。
カットオフ波長より長い波長領域では高次のモードが導波するマルチモード伝搬となり、短い波長領域では基本モードのみが導波するシングルモード伝搬となる。
メモ:
基本モードに加え、高次モードも伝送可能
Cモードフィールド偏心量とは、モードフィールド中心とクラッド中心との距離をいい、モードフィールド中心とコア中心は実質的には同じ場所になるので、モードフィールド偏心量は、一般に、コア中心とクラッド中心との距離として測定される。
光ファイバの伝搬特性について述べた次の文章のうち、正しいものは、【④】である。
①SM光ファイバにおけるモードフィールド径は、光強度分布がガウス型で近似できるとき、光強度(光パワー)が最大値の1/【e^2】(eは自然対数の底)になるところの直径をいう。
②基本モードにおける光強度分布は、コアの中心で最大値となり、中心から離れるに従って小さくなり、【ガウス分布】で近似することができる。
③SI型光ファイバにおいては、コアとクラッドの境界面を臨界角よりも小さな角度で反射しながら進む光波が存在するが、この光波が光ファイバの伝搬モードになるためには、コアの中心軸に直交する方向の位相変化量が、光波の1往復に伴って【2π】の整数倍になる必要がある。
④光ファイバで伝搬可能なモード数を構造パラメータから求めるには、規格化周波数Vが用いられ、空気中の光の波長をλ、コアの半径をa、コアの屈折率をn1、クラッドの屈折率をn2とすると、Vは次式で表すことができる。
V=2πa/λ×√(n1^2-n2^2)
(ⅲ)石英系光ファイバにおける分散などについて述べた次のA~Cの文章は、【BCが正しい】。
A 光ファイバの材料であるガラスの屈折率が光の周波数により僅かながら異なるため、光ファイバ中を伝搬する光パルスの幅が【広まる】現象は、分散といわれる。
B MM光ファイバは、SM光ファイバと比較して、コア径が大きく光源との結合効率も高いが、モード分散により伝送帯域が制限され、一般に、距離の短い構内配線などで使用される。
C SM光ファイバのゼロ分散波長や分散スロープを制御して製作された光ファイバは、総称して分散制御光ファイバといわれる。
(ⅳ)石英系光ファイバの分散特性について述べた次の文章のうち、誤っているものは、【③】である。
①材料分散は光ファイバの材料である石英ガラスの性質に依存するため、大きく変化させることはできないが、構造分散は、比屈折率差や屈折率分布を調節することで変化させることができる。
②光ファイバのコア形状の僅かなゆがみによって複屈折が生じ、光ファイバ中を伝搬する二つの偏波モード間に伝搬時間差が生ずる現象は、偏波モード分散といわれる。偏波モード分散は、波長分散と比較して光信号への影響は小さいが、伝送速度が高速になるほど伝送距離を制限する要因の一つとなる。
③光ファイバの波長分散は、材料分散と構造分散の和であるが、SM光ファイバでは【材料分散】が伝送帯域を制限する主な要因となる。SM光ファイバの波長分散は、一般に、1.3μm付近でゼロとなっている。
メモ:
④入射光パルスが光ファイバ中を幾つかの異なったモードで伝搬することによって生ずる分散は、モード分散といわれる。モード分散を小さくするためにコアの屈折率分布を放物線状としたものがGI型光ファイバであるが、モード分散を完全に無くすことはできない。

コメント