H30第2回-通信線路-問2 電気通信主任技術者(線路)

(1) 次の文章は、光ファイバへの光の入射などについて述べたものである。

光ファイバへの光の入射角など

発光源から出射された光は回折現象により広がることから、細い光ファイバのコアに入射させるためには、レンズなどを用いて集光する工夫がなされている。図において、光ファイバに入射した光がコア内をクラッドとの境界で全反射して伝搬するためには、コアからクラッドへの光の入射角をφcより大きくする必要があり、このときの入射角φcは【臨界角】といわれる。
空気、コア及びクラッドの屈折率をそれぞれn0 、n1 及びn2とし、最大受光角をθmax、コアに入射した光とコアとクラッドの境界面とのなす角度をθcとするとき、θmaxとθcの間には、スネルの法則により【n0sinθmax₌n1sinθc】が成り立つ。
また、sinθmaxは【開口数】といわれ、n0₌1及びn1≒n2とすれば、sinθmax ≒n1√2Δとなる。ここで、Δ(デルタ)はコアとクラッドの比屈折率差であり、【n1-n2/n1】で表される。コアが受け入れられる光の量は、コア径と【開口数】の大きさで決まり、これらが大きいほど発光源と光ファイバとの結合効率が良くなる。集光に用いられるレンズは、一般に、発光源からのビーム径と光ファイバの【開口数】により決定される。
(2) 次の文章は、光ファイバの伝搬特性、フォトニック結晶光ファイバ、ファイバグレーティング、光源と光ファイバの結合などについて述べたものである。

メモ:

フォトニック光ファイバ

フォトニック結晶光ファイバhttps://www.ntt.co.jp/news2018/1804/180425a.html
(ⅰ) 光ファイバの伝搬特性について述べた次の文章のうち、正しいものは、 (①) である。
① 光ファイバで伝搬可能なモード数を構造パラメータから求めるには、規格化周波数Vが用いられ、空気中の光の波長をλ、コアの半径をa、コ ア の 屈 折 率 をn 、1クラッドの屈折率をn とすると、Vは次式で表すことができる。
V=2πa/λ×√(n1^2-n2^2)
② SI型光ファイバにおいては、コアとクラッドの境界面をブリュースター角よりも小さな角度で反射しながら進む光波が存在するが、この光波が光ファイバの伝搬モードになるためには、コアの中心軸に直交する方向の位相変化量が、光波の1往復に伴って【2π】の整数倍になる必要がある。メモ:https://masassiah.web.fc2.com/contents/17cte/ss2018ss.html

③ SM光ファイバにおけるモードフィールド径は、光強度分布がガウス型で近似できるとき、光強度(光パワー)が最大値の 【1/e^2】(eは自然対数の底)になるところの直径をいう。
④ 基本モードにおける光強度分布は、コアの中心で最大値となり、中心から離れるに従って小さくなり、【ガウス分布】で近似することができる。メモ:ガウス分布=正規分布ポアソン分布

例えば「地震の発生回数」を「ランダムなイベント」とみなすと,「これから 100 年間のうちに地震が発生する回数」がポアソン分布で表現できます。

「ランダムなイベント」とは大雑把に言うと「起こる確率が常に一定である」ようなイベントのことです。

https://mathtrain.jp/poisson(ⅱ) フォトニック結晶光ファイバ(PCF)について述べた次のA~Cの文章は、 (ACが正しい) 。
A クラッド部に空孔を周期的に配列した構造の光ファイバは、一般に、PCFといわれ、光の導波原理により、フォトニックバンドギャップ型又は屈折率導波型に分類される。
B フォトニックバンドギャップ型PCFは、中空のコアに【ブラッグ】反射によって光を閉じ込めて伝搬するため、ガラスの欠点である損失や分散による影響を小さくできる特徴がある。メモ:https://www.fiberlabs.co.jp/tech-explan/about-pcf/■フォトニック結晶ファイバ(PCF)とは フォトニック結晶ファイバ(PCF:Photonic Crystal Fiber)とは、光ファイバ断面に空孔や高屈折率ガラスを規則的・周期的に配列した構造を持つもので、微細構造ファイバ(Micro-Structure Fiber)やホーリー・ファイバ(HF:Holey Fiber)とも呼ばれます。
 PCFは、光の伝わり方によって屈折率導波型とフォトニック・バンドギャップ(PB:Photonic Bandgap)型に分けられます。屈折率導波型は通常使われている光ファイバと同じくコアとクラッドの境界面で全反射を繰り返しながら伝わっていくもので、多くはクラッド部に空孔が規則的に配列された形をしています。一方、PB型PCFは、ブラッグ反射※1により光を閉じ込めて導波するもので、空孔や高屈折率部材の大きさ・配列間隔を高精度に制御する必要がありますが、コアが空孔であっても光を伝送することができます。
 屈折率導波型PCFは、エンドレス・シングルモード(ESM:Endlessly Single Mode)ファイバ、スーパーコンティニウム(SC:Super Continuum)光発生用ファイバ、任意の波長で波長分散がゼロとなるゼロ分散ファイバ、偏波保持ファイバ、急峻な曲げに対しても損失増加を抑えられる局内配線用ファイバ、大口径なシングルモードファイバなどの用途に使用されています。
[用語解説]
※1 ブラッグ反射 : 結晶のような周期的構造を持つ物質に光を当てると、結晶内で散乱した光が入射角によって強め合ったり打ち消しあったりする現象です。光の波長と空孔や高屈折率材による周期的構造部の大きさによって、光を閉じ込めることができるようになります。
C 屈折率導波型PCFは、一般に、コア部とクラッド部が同じガラス素材で構成されているが、クラッド部に設けられた空孔によりクラッド部の実効的な屈折率がコア部の屈折率と比較して小さくなるため、全反射によって光を閉じ込めて伝搬させることができる。
(ⅲ) フ ァ イ バ グ レ ー テ ィ ン グ (F G )に つ い て 述 べ た 次 の 文 章 の う ち 、 誤 っ て い る も の は 、(②) である。
① FGは、光ファイバのコアに周期的な屈折率変化を形成することにより、特定の波長の伝搬光を選択的に反射又は阻止することのできる波長選択デバイスとして用いられ、同様の機能を有する光デバイスである多層膜光フィルタと比較して、伝送用光ファイバとの接続性に優れている。
② FGは、グレーティング周期が数十 μm ~数百 μm の長周期型と、1 μm以下の短周期型に分類される。長周期型はブラッグ波長の光を反射させる機能を、また、短周期型は特定の波長の光をクラッドモードに結合させて損失を与える機能を有し、【短周期型は】分散補償器として用いられる。メモ:https://annex.jsap.or.jp/photonics/kogaku/public/32-05-gijutsu4.pdfhttps://www.taf.or.jp/files/items/553/File/P270.pdf一般に、LPFG はエキシマレーザなど遠紫外線光源を照射して光屈折率効果によりファイバコアの屈折率を周期的に変調して得られる。そのため、仕様は固定であり、且つ損失機能のみのため、応用は光増幅器の利得等化器や監視波長の除去あるいはセンシング応用に限られている
③ FGの温度特性は、光路の温度変化による屈折率変化と熱膨張によって決まり、石英ガラスを用いたFGの場合は、屈折率変化が支配的要因となっている。短周期型FGを波長選択デバイスとして用いる場合には、一般に、FGを固定する台座の温度特性を利用するなどして温度補償が行われている。
④ FGの作製方法には、2光束干渉法、位相マスク法などがある。位相マスク法は使用する位相マスクによりグレーティング周期が定まり、2光束干渉法と比較して、同一のグレーティング周期を持つFGを安定的に量産することができる。
(ⅳ) レーザ光源と光ファイバとの結合方法などについて述べた次のA~Cの文章は、 (B、Cが正しい) 。
A 光源からの光は、【屈折や回折】により広がって放射されることから、光ファイバと効率良く結合させるために、光源に光ファイバの先端を単に近づける直接結合方式をベースにして、レンズを用いるレンズ結合方式、光ファイバの先端をレンズ状にした先端レンズ方式などが用いられる。メモ:https://masassiah.web.fc2.com/contents/17cte/ss2018ss.html

ドップラー効果とは、例えば救急車が遠いときはサイレンの音が低く波長が長く聞こえるが、近づくにつれ高く波長が短く聞こえる現象
B 光源は、レンズなどの光学部品から反射された光が注入されると、レーザの発振が不安定になることから、光源モジュールには、一般に、反射光の帰還を阻止するための光アイソレータが組み込まれている。
C 光源と光ファイバとの結合部は、光源、レンズ、光ファイバなどの光学部品が振動、温度・湿度の変化などによる影響を受けないようにするため、一般に、モジュール化されている。光源モジュールには、伝送用光ファイバと接続するためのピグテール光ファイバが取り付けられたものがある。

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