H30第1回-通信線路-問3 電気通信主任技術者(線路)

(1)次の文章は、光ファイバの分散補償技術などについて述べたものである。
分散補償技術には、非線形光学効果を利用して位相共役波、ソリトンなどを発生させる、又は外部位相変調器を利用して【プリチャーピング】を行うなどの能動型のものと、【DCF】、PLC、FBGなどの光デバイスを利用する受動型のものがある。
【DCF】は、一般に、伝送路として使われる1.55μm帯での波長分散がゼロではない光ファイバの前又は後ろに接続することにより、EDFAが使用可能な1.55μm帯で使用可能とするものであり、伝送路として使われるSM光ファイバが有する波長分散値を、短い長さで補償するために絶対値が大きくかつ正負が逆の波長分散値を持つことが要求される。
PLCを利用した分散補償器は、【平面導波路基板】の上にマッハツェンダ干渉回路を多段に接続して形成され、分散スロープを補償する特性を持たせることもできる。
DWDMシステムで使用する波長帯域の拡張に伴い、光ファイバの波長分散だけではなく分散スロープを補償することが求められる。分散スロープも含めた分散補償の観点から分散スロープと波長分散の比で表される【RDS】といわれるパラメータが、光ファイバの分散スロープ補償率の指標として使われている。
メモ:

分散補償器は、波長分散による信号波形の歪みを補償するもので、主に二つの方式が使われます。一つは波長分散と逆の特性を持つ分散補償ファイバ(DCF:Dispersion Compensating Fiber)を縦続して波長分散の影響を打ち消す(歪みを補償する)方式です。もう一つは、光ファイバ内でブラッグ反射を起こさせる光ファイバ・ブラッグ・グレーティング(FBG:Fiber Bragg Grating)※2を応用して、波長ごとにブラッグ反射による伝搬時間差を起こさせ、歪みを補償するチャープ・ファイバ・ブラッグ・グレーティング(CFBG:Chirped Fiber Bragg Grating)方式です。

 DCF方式は、広い波長範囲にわたっての補償が可能で、波長多重通信など多くの光波で運ばれた光信号を一括して補償することができますが、比較的長いファイバ長(伝送用ファイバ長の1割前後)が必要となり、それに伴い挿入損失も大きくなります。

PLCとは石英系プレーナ光波回路
(2)次の文章は、光ファイバの分散、光強度変調方式などについて述べたものである。
(ⅰ)石英系光ファイバの分散などについて述べた次の文章のうち、正しいものは、(①)である。
①コアの両側のクラッド部内に円形の応力付与部を配置し、二つの偏波モードの結合を抑制した光ファイバは偏波保持光ファイバといわれ、光増幅器における偏波分離合成器などの光デバイスに使用される。
②光通信システムで伝送される信号の品質は、SN比と波形ひずみに影響される。
SN比の劣化と波形ひずみの要因は、通信用光ファイバケーブルの分散と損失であり、一般に、SN比は【損失】により劣化し、波形ひずみは【分散】により増大する。
③比屈折率差や屈折率分布を調整することで材料分散を変化させ、石英系ガラスの伝送損失が最小となる1.55μm帯において【分散波長】がゼロとなるSM光ファイバは、DS光ファイバといわれる。
メモ:
④光ファイバの分散パラメータは、光ファイバの単位長さと光スペクトルの単位波長範囲に対する群遅延の広がりをいい、群速度の分散パラメータが正の場合を異常分散、負の場合を正常分散という。
(ⅱ)光ファイバ通信に使用される光強度変調方式などについて述べた次の文章のうち、正しいも
のは、(②)である。
①LDの駆動電流を変化させて電気信号を光強度に変換する直接変調は、変調器の小型化が可能であるが、数GHz以上の高速変調では、発振周波数が変化するショット雑音により光スペクトルが信号帯域以上に広がり、波形の劣化を生じる。
②外部変調は、LDに直流駆動電流のみを流して出力される無変調光を、電気光学効果などを利用して変調するため、チャーピングの少ない強度変調が可能である。
③LN変調器は、ポッケルス効果を利用して位相変調、強度変調及び偏波変調が可能であり、位相変調の原理は、加えた電圧によって生ずるブラッグ反射を利用して、導波路を伝搬する光の位相を変化させるものである。
④EA変調器は、半導体の導波路における光の吸収量(損失)の波長依存性が、印加する電圧で変化する性質を利用したものであり、LN変調器と比較して、一般に、大型で動作電圧が高くLDとの集積が困難である。
メモ:
(3)次の文章は、光ファイバの測定技術などについて述べたものである。
(ⅰ)OTDRによる測定などについて述べた次の文章のうち、誤っているものは、(④)である。
①OTDRは、光パルスを光ファイバに入射したときに、光ファイバ内で生ずる反射や散乱による戻り光を測定することによって、光ファイバの長さ、損失値及び破断点の位置を特定することができる。
②OTDRの測定波形は、一般に、横軸に距離、縦軸に損失が表示され、光ファイバの近端及び遠端並びに光コネクタで接続された場所は、フレネル反射が観測される。
③光パルスは、光カプラを通して被測定光ファイバに入射され、反射やレイリー散乱によって戻ってきた光は、光カプラを通じてAPDに入射される。

④光パルス幅100nsで接続点、接続損失などを測定するとき、接続点間の距離が短いために判別が困難な場合は、光パルス幅を1【ns】のように、より【小さく】することで測定することができる。
(ⅱ)OTDRの機能と特徴について述べた次の文章のうち、正しいものは、(③)である。
①OTDRを用いた光ファイバケーブルの損失測定では、一般に、得られる後方散乱光パワーが非常に微弱であるため、光ファイバケーブルを往復する時間よりも短い周期で繰り返し光パルスを送出し、受信信号(後方散乱光強度信号)を相乗平均することで、SN比の良い信号強度を検出する手段が採られる。
②OTDRの仕様において、一般に、光出射端近傍の反射光(後方散乱光)レベルからSN比が2のノイズフロアまでの後方散乱光強度が測定できる範囲はダイナミックレンジといわれ、ダイナミックレンジが狭いOTDRほど長い距離の光ファイバの光損失を測定できる性能を有している。
③OTDRによる測定では、光コネクタなどで生ずる反射光及びその反射光で生ずる受信波形の裾引きによって、引き続く接続点などの位置や損失などが測定不能となる距離の範囲が存在し、この範囲はデッドゾーンといわれる。
④OTDRの仕様において、デッドゾーンには、反射測定デッドゾーンと損失測定デッドゾーンがある。反射測定デッドゾーンとは、反射光のピークレベルから3.0dB低下する範囲をいう。

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