H27第1回-通信線路-問3 電気通信主任技術者(線路)

(1)次の文章は、光強度変調方式について述べたものである。
光通信システムで広く用いられるIM/DD方式は、送信側において変調信号により強度変調された光搬送波を、受信側においてAPDなどを用いて直接検波する方式である。
メモ:
強度変調(Intensity modulation: IM)・直接検波(Direct detection: DD)方式
この方式は、受信側における復調信号に光の位相情報は含まれず、光の【振幅】の2乗に比例した出力、すなわち光強度に比例した出力が得られることから、伝送特性が光の位相揺らぎによる影響を受けにくい特徴がある。
送信側における変調方式には、LDの光出力を直接変調する直接変調方式及びLDの外部に設けた変調器によって変調する外部変調方式がある。
直接変調方式は、LDへの印加電流を変化させることにより容易に強度変調を実現することができるが、変調速度が速くなると、発振周波数が変化する【チャーピング】といわれる現象が生ずること、バイアス電流を上げると【消光比】が劣化することなどから高速化には適していない。
このため、高速の変調には、一般に、外部変調方式が用いられる。外部変調器には、結晶に電界を印加すると電界強度に比例して屈折率が変化する現象である【ボッケルス】効果を利用したLN変調器、結晶に電界を印加すると光吸収係数が変化する現象である電界吸収効果を利用したEA変調器などがある。
(2)次の文章は、石英系光ファイバの分散特性、分散補償器、OTDRなどについて述べたもので
ある。
石英系光ファイバの分散特性などについて述べた次のA~Cの文章は、【BCが正しい】
A SM光ファイバにおいて、ゼロ分散波長を境に、長波長側は正常【異常】分散領域といわれ、短波長側は異常【正常】分散領域といわれる。正常分散領域においては波長が長くなるほど群速度が大きくなり、異常分散領域においては波長が長くなるほど群速度は小さくなる。
B 材料分散は石英ガラスの材料によって決定されるため調整することは困難であるが、構造分散は光ファイバの比屈折率差や屈折率分布を調節して変化させることができる。DSFは、SM光ファイバの構造分散を調整して、ゼロ分散波長を1.3μm帯から1.55μm帯にシフトさせた光ファイバである。
C 偏波モード分散は、SM光ファイバのコア形状のわずかなゆがみなどによって、伝搬する光の直交する二つの偏波モード間に群遅延時間差が生ずることにより発生する分散であり、高速・長距離伝送システムにおいて問題となる場合がある。
分散補償光ファイバ及び分散補償器について述べた次の文章のうち、誤っているものは、【④】である。
①分散補償光ファイバは、屈折率分布形状により、マッチドクラッド型、W型などに分類される。マッチドクラッド型は、W型と比較して、構造が単純で低損失であるが、分散スロープは通常使用されるSM光ファイバと同様に正値であるため、分散を小さな値に抑えることができる波長範囲は狭い。
②W型の分散補償光ファイバは、マッチドクラッド型と比較して、損失は大きいが、分散値及び分散スロープを通常使用されるSM光ファイバと逆の値にすることができるため、分散を小さな値に抑えることができる波長範囲は広い。
③線形素子を利用した受動型の分散補償器には、FBG型、PLC型などがある。
FBG型の一つであるチャープト型分散補償器は、光ファイバの長手方向の屈折率を周期的に変化させてグレーティングを形成したFBGと光サーキュレータを組み合わせて反射モードで使用することにより、正負いずれの分散にも対応した補償器とすることができる。
④PLC型分散補償器は、平面導波路基板上にマッハツェンダ干渉回路を多段に接続した構造で負の分散値を持った補償器であり、電界吸収効果を利用した位相シフタ及び光カプラの屈折率【可変カプラの結合率】の調節により分散値を変えることができる。
(ⅲ)OTDRについて述べた次の文章のうち、誤っているものは、(キ)である。
①OTDR測定では、被測定光ファイバに入射した光パルスの一部がレイリー散乱により入射点に戻ってくる後方散乱光、フレネル反射による反射光などの大きさの時間変化により、光ファイバ接続点における接続損失の測定、破断点の特定などが可能である。
②OTDRは、一般に、パルス発生器、光源、受光部、識別再生器【方向性結合器】、表示装置などで構成されている。OTDRにおける識別再生器【方向性結合器】は、光源からの光パルスと、被測定光ファイバから戻って来る後方散乱光やフレネル反射光を識別再生して比較する機能を有している。
③OTDR測定において、ダイナミックレンジとは、光出射端近傍における反射光(後方散乱光)のパワーレベルからノイズフロアすなわちSN比が1となるレベルまでの範囲をいう。OTDR測定では、使用するパルス幅を広くすることによりダイナミックレンジを広げることができるが、空間分解能は低下する。
④OTDR測定において、デッドゾーンとは、損失などを測定できない範囲のことを指し、反射測定デッドゾーンと損失測定デッドゾーンがある。反射測定デッドゾーンは、フレネル反射のピークレベルから1.5dB低いレベルにおける範囲である。
(ⅳ)OTDRによる測定について述べた次のA~Cの文章は、【ABが正しい】
A OTDRの測定においては、一般に、検出される後方散乱光パワーが微弱であり、測定器内の各デバイスのショット雑音、熱雑音などの影響を受けて十分なSN比を確保しにくいことから、光パルスが被測定光ファイバを往復する時間よりも長い周期で繰り返し測定を行い、受信信号を加算平均処理することにより測定精度を上げている。
B OTDRには、光ファイバの損失や破断点の測定だけでなく、複数の波長の光パルスを使用し、それぞれの波長が遠端で反射して戻って来る光パルスの到達時間を計測することにより、分散スロープ及び波長分散値を測定する機能を有するものがある。
C OTDRに
よる測定において、光ファイバの接続部分における接続損失の値が負になる場合がある。これは接続された光ファイバのコア径の違い【ロット差により生じるレイリー後方散乱光レベル差と,接続損失そのものが合計された段差となっているもの】に起因するもので、正確な接続損失を得るには両端から測定を行い、測定結果の平均値を求める必要がある。

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