H28第1回-通信線路-問3 電気通信主任技術者(線路)

(1)次の文章は、光通信に用いられるLDの特徴などについて述べたものである。
LDは、その構造の違いにより、端面発光型及び面発光型に分類される。
端面発光型には、ファブリペロー型LD(FP-LD)、分布帰還型LD(DFB-LD)などがある。
FP-LDは、多数の縦モードで発振することから、放射された光が光ファイバ中を伝搬すると波長分散の影響によりパルス幅が広がるため【符号間干渉】を引き起こす。このため、長距離・高速伝送の光通信システムの光源には、一般に、【単一】モードで発振するDFB-LDが用いられる。
端面発光型のLDから放射された光は、一般に、楕円形の広がりをもつことから、断面が円形である光ファイバとの結合においては、LDと光ファイバとの間にロッドレンズや円柱レンズを配置するなどして、光を【集束する】必要がある。
一方、面発光型のLDは、【VCSEL】ともいわれ、基板面に対して垂直方向にレーザ光を放射する。【VCSEL】から放射された光は、端面発光型のLDとは異なり、円形の広がりをもち、設計によって放射光のモードフィールド径を光ファイバと同程度にできるため、レンズなしで光ファイバと結合することも可能である。
メモ:
VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER):垂直共振器面発光レーザ
(2)次の文章は、光通信システムで用いられる光変調方式、LDの制御方式、多重化方式などについて述べたものである。
(ⅰ)光変調方式の特徴などについて述べた次の文章のうち、正しいものは、【④】である。
①電気信号によりLDの出力光を強度変調する方式には、直接変調方式と外部変調方式がある。外部変調方式【直接変調方式】は、駆動回路においてLDにバイアス電流と変調信号を印加することにより変調光を得る方式である。
②直接変調方式では、変調速度が増すと波長チャーピングが生ずることによりSN比【信号】が劣化し、伝送距離が制限される。このため、変調速度が数Gbit/sを超える場合には、一般に、光源と変調回路を分離し、LN変調器、EA変調器などを用いた外部変調方式が採用される。
メモ:チャーピングとは高速で変調した場合に光の波長が変動する現象
③LN変調器は、導波路構造のマッハツェンダ干渉計構成をとり、電極に電圧を印加したとき、ポッケルス効果により導波路のブラッグ波長【光の位相】が変化し、光の干渉状態が変わることを利用して出力光をオン/オフしている。
④EA変調器は、PN接合のダブルヘテロ構造を持つダイオードに逆バイアスを印加したとき、電界吸収効果により導波層を通過する光が吸収されることを利用して出力光をオン/オフしている。
(ⅱ)LDの温度制御、強度制御、波長制御などについて述べた次の文章のうち、誤っているものは、【①】である。
①温度変化による発振波長の変動を補償する温度制御(ATC)は、抵抗値の温度依存性が大きいアバランシホトダイオード(APD)サーミスタをLD近傍に配置し、APDの抵抗値の変動を監視し、その変動量をフィードバックさせることにより、LDの温度を一定に保つものである。
②経年劣化などによる出力強度の低下を補償する強度制御(APC)は、LDの端面近傍にモニタPDを配置し、モニタPDの受光電流の変動を監視し、その変動量をフィードバックさせることにより、LDの出力強度を一定に保つものである。
③高い波長安定性が求められるWDMシステムなどにおいては、一般に、ATCに加えて、波長制御(AFC)が行われる。AFCは、LDの出力光の波長変動を監視し、その変動量をフィードバックさせることにより、LDの出力波長を一定に保つものである。
④LDの発振波長は、用いられる半導体材料によって決まるが、波長可変LDでは、温度制御、電流注入制御などにより屈折率を変化させる方法、共振器長を変化させる方法などにより、発振波長を制御することができる。
(ⅲ)光通信システムで用いられる多重化方式について述べた次の文章のうち、正しいものは、【③】である。
①光パルスをフレームごとに少しずつ時間をずらして多重化する方式はTDMといわれ、多重化後の信号のパルス幅は多重化前より広く【狭く】なり、ビットレートは多重化数に応じて上昇する。
②信号形態や伝送速度が異なる複数の波長の光を1本の光ファイバケーブルで伝送する方式はWDMといわれ、多重する波長数により、百波【十数波】程度を多重化するCWDMと十数波【百波】程度を多重化するDWDMに分類される。
③WDMで使用される波長は、ITU-T勧告で規定されており、DWDMでは、一般的なEDFAの増幅帯域のほぼ中央の周波数である193.1THzを中心に、一定の間隔で配列されている。
④中継系の光通信システムでは、WDM【TDM】技術により多重化された複数の光信号をさらにTDM【WDM】技術を用いて一括して多重化する方法により、1心の光ファイバで数Tbit/sの高速伝送を実現している。
(ⅳ)フォトニック結晶光ファイバ(PCF)について述べた次のA~Cの文章は、【ABが正しい】。
Aクラッド部に空孔を周期的に配列した構造の光ファイバは、一般に、PCFといわれ、光の導波原理により、屈折率導波型又はフォトニックバンドギャップ型に分類される。
B屈折率導波型PCFは、一般に、コア部とクラッド部が同じガラス素材で構成されているが、クラッド部に設けられた空孔によりクラッド部の実効的な屈折率がコア部の屈折率と比較して小さくなるため、全反射によって光を閉じ込めて伝搬させることができる。
Cフォトニックバンドギャップ型PCFは、中空のコアにフレネル反射【ブラッグ反射】によって光を閉じ込めて伝搬するため、ガラスの欠点である損失や分散による影響を小さくできる特徴がある。

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