H26第2回-データ通信-問3

(1)GE-PONシステムの特徴について

GE-PONシステムのOLTからONU方向への下り通信では、全く同一の信号が放送形式でOLT配下の全ONUに到達するため、各ONUは受信したフレームが自分宛であるかどうかの取捨選択を【LLID】といわれる識別子を用いて行う。

また、ONUからOLT方向への上り通信では、ONUは自分に割り当てられた【LLID】を送信フレームに埋め込んでOLTへ送出し、OLTでは受信したフレームの判別を、【LLID】により行う。

GE-PONシステムでは、1〔Gbit/s〕の上り帯域を、OLTに接続される複数のONUで分け合う仕様になっている。上り帯域を最も簡単に共有させる方法として、各ONUに一定のデータ量の送信許可を継続して与える固定帯域割当があるが、この方法では、上りトラヒックが流れていないONUに対しても帯域を固定的に割り当ててしまうため、【未使用】帯域が生じ、上り帯域の利用効率が低下してしまう。

上り帯域の利用効率を向上させる方法として、OLTに【DBA】機能を持たせる方法がある。【DBA】機能は、各ONUから送信されるデータ量に応じて、動的に帯域割当を行うものである。この機能を用いることにより、各ONUの上りトラヒックの状況に応じて柔軟に帯域を割り当てることができるようになり、効率的に上り帯域を使用できる。この【DBA】機能を実現するために必要な制御信号などに関するプロトコルは、IEEE802.3ahで【MPCP】として標準化されている。

メモ:DBA(Dynamic Bandwidth Allocation)とはONUからOLTへの上り帯域を、トラヒック量に応じて動的に割り当てる機能http://www.ntt.co.jp/journal/0510/files/jn200510067.pdf
MPCP(Multi Point Control protocol)とはDBA機能を実現するために必要な制御信号などに関するプロトコル
https://www.oki.com/jp/Home/JIS/Books/KENKAI/n197/pdf/197_R20.pdf

(2)WDM伝送の特徴などについて述べた次の文章のうち、正しいものは、【①】である。

①WDM伝送では、光波長を100〔GHz〕間隔の周波数グリッドで配置する方法のほか、25〔GHz〕間隔や12.5〔GHz〕間隔で配置する方法により、より高密度で多重化する方法がある。

②WDM伝送を用いると、各波長の信号光間のクロストークが発生するため、イーサネットやSDHのように信号形式や伝送速度が異なる信号を、同じWDMシステム内で同時に伝送することはできない。

③WDM伝送における光信号の劣化には、中継器で発生するASEなどによる波形劣化と、信号光の強度により位相がシフトする自己位相変調及び相互位相変調並びに材料分散などの波長分散によるSN比劣化などがある。

④WDM伝送における伝送波長数を増加する手段として、1.31μm帯に利得帯域を持つEDFAに加えて、利得帯域をさらに長波長側にシフトさせたGS-EDFAを用いる方法がある。

メモ:光波長多重通信(WDM)とは同軸ケーブルへ電気的な信号を流す場合と異なり、ラマン光増幅、分散シフト (DSF) 光ファイバの非線形現象などの例外を除いて光ファイバを通過する光信号は他の波長の光信号と干渉しない。そのため、複数の波長を使用して光信号を送受信すれば、1信号を1光ファイバで送る場合と比べて実質上多くのファイバがあるように使用できる。クロストーク(漏話)が発生しても妨害波にはならない。https://ja.wikipedia.org/wiki/光波長多重通信http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/catv_system/pdf/070315_1_sa1_4.pdf
自然放出光雑音(ASE)とは光増幅器によって発生する光の雑音の一種。増幅器は光信号が入ってこない状態でも少しずつエネルギーを放出しており、これをASE雑音という。http://www.bell.jp/pancho/terminology/hyper-dictionary/50-sa/si/ase_noise.html
EDFAは1.55μmまたは1.58μm帯の信号光を増幅するエルビウム添加ファイバ増幅器でWDMシステムなどに多く用いられる。
TDFAは1.5μm帯を増幅するツリウム添加ファイバ増幅器
PDFAは1.3μm帯を増幅するプラセオジム添加ファイバ増幅器

(3)アクセスネットワークにおける多重化技術などについて述べた次のA~Cの文章は【Aのみ正しい】。

A CATVのHFCシステムに用いられているSCM方式では、FDM化されたケーブルテレビ信号で強度変調された光信号を用いて、光ファイバによる多チャンネル映像伝送を行っている。

B FTTHの光映像配信システムに用いられているベースバンド伝送方式では、映像信号などを一括して広帯域のFM電気信号に変換し、この信号でLDの出力光を変調した光信号を用いて、光ファイバによる多チャンネル映像伝送を行っている。

C 光アクセスネットワークで用いられるTCM方式は、光方向性結合器を用いて、光ファイバ内を伝送する光の方向により上り信号と下り信号を識別し、1心の光ファイバで双方向通信を実現する方式である。

メモ:FM一括変換伝送方式とは映像信号などを一括して広帯域のFM電気信号に変換し、この信号でLDの出力光を変調した光信号を用いて、光ファイバによる多チャンネル映像伝送を行っている。波長分散、光反射への耐力向上に加えて、光増幅器等による雑音耐力、受光感度も向上。SCM伝送方式と比べて光送受信機の回路が複雑。

SCM方式とFM一括変換伝送方式

TCM方式(時間多重:Time Compression Multiplexing)とは時間分割したタイムスロットを用意し、多チャンネル化する技術。ピンポン伝送。

(4)固定無線アクセスシステムの特徴などについて述べた次の文章のうち、正しいものは【④】である。

①2.4GHz帯及び5GHz帯を使用する無線LANをベースとしたFWAは、ミリ波及び準ミリ波帯を使用したFWAと比較して低コストで、電波の出力にかかわらず無線局免許が不要であるため、迅速な回線設定が可能である。

②固定WiMAXやIEEE802.11a方式の無線LANで採用されているSDMA方式は、高速なデータを複数の低速なデータに分割し、複数のサブキャリアを用いて並列伝送を行うことで、伝送遅延の影響を低減することが可能である。

③FWAには、基地局と複数の利用者を結ぶポイント・ツー・マルチポイント方式と、基地局と利用者を1対1で結ぶポイント・ツー・ポイント方式がある。ポイント・ツー・マルチポイント方式の最大伝送距離は、一般に、基地局を中心とした半径25〔km〕程度である。

④IEEE802.11n規格などで用いられているMIMO方式は、送受信に複数のアンテナを用いることにより、空間多重による伝送速度の向上や複数の通信経路の異なる電波の伝送特性を利用したダイバーシチ効果による接続性の向上が図られている。


メモ:固定無線アクセスシステム(FWA)とは固定無線アクセスシステム(FWA:Fixed Wireless Access)は、オフィスや一般世帯と電気通信事業者の交換局や中継系回線との間を直接接続して利用する無線システムです。
地域通信市場の競争促進、インターネットの利用拡大等大容量通信ニーズへの対応という点で展開が期待されています。電気通信事業者側の基地局と複数の利用者側の加入者局とを結ぶ1対多方向型(P-MP;Point to Multipoint)と、電気通信事業者側と利用者側とを1対1で結ぶ対向型(P-P;Point to point)があります。
※「加入者系無線アクセスシステム」は「固定無線アクセスシステム」へ名称変更しました。(平成17年改正)
概要
(1)使用周波数帯準ミリ波帯・ミリ波帯(22GHz帯、26GHz帯、38GHz帯)

(2)P-P方式伝送速度 最大156Mbps(参考値)伝送距離 最大4km程度(参考値)
(3)P-MP方式伝送速度 最大46Mbps(参考値)伝送距離 最大1km程度(参考値)http://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/system/trunk/wimax/fwa/
SDMA方式(Spatioal Dibision Multiple Access:空間分割多重)とは同一の通信路を複数の通信主体で混信することなく共用するための多元接続(多重アクセス)技術の一つで、空間的に伝送路を分割して複数の主体で同時に通信する方式。

(5)CATVシステムにおけるインターネットアクセスなどについて述べた次の文章のうち、誤っているものは【③】である。

①ケーブルモデム終端装置(CMTS)は、一般に、CATVセンタに設置されるヘッドエンド装置に接続され、ユーザ宅のケーブルモデム(CM)とインターネットなどの外部ネットワークとの間の接続制御を行っている。

②HFCシステムにおけるインターネット接続用の伝送周波数は、一般に、ユーザ宅からCATVセンタへの上り方向に10~55〔MHz〕、下り方向に600~770〔MHz〕が使用されている。

③ユーザ宅に設置されるCMは、CATV網を介してCMTSと接続され、下り方向ではCATVのテレビ1チャネル分に相当する34.5〔MHz〕の帯域を使ってデータ伝送を行うことができる。

④PONを用いたFTTH型CATVには、下り信号においては、放送用として1.55〔μm〕、通信用としては1.49〔μm〕の波長を、上り信号においては、通信用として1.31〔μm〕の波長をそれぞれ用いることにより、1心の光ファイバで双方向通信を行う方法がある。

メモ:類似問題http://www.shimesabanote2.org/cte_study/h23-2/h23-2-3

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