H25第2回-伝送交換設備及び設備管理-問3

IP電話網における音声伝送品質、統計的品質管理用語、故障に対応するためのシステム設計技術及び保全方式について

(1)IP電話ア網における音声伝送品質の概要について

IP電話網における音声伝送品質の劣化要因には、音声信号をデジタル化することにより発生する雑音、パケットを形成するために生じるパケット化遅延、IP電話網での伝送遅延、パケットの到着間隔のずれによる【遅延揺らぎ】、ルータにおけるバッファのオーバフローによるパケット損失などがある。

IP電話網では、これらの要因による音声伝送品質の劣化の低減を図るため、優先制御、【フラグメント化】などを行い、伝送遅延時間の短縮を実現している。ルータによる優先制御は、ルータが受け取った音声パケットを、ほかのパケットよりも優先的に送信する機能である。また、【フラグメント化】は、フレーム長が長いパケットを分割して、指定した長さ以下にする機能である。

IP電話網における音声伝送品質の評価方法の一つに、ITU-T勧告G.107で規定されている【R値】といわれる総合音声伝送品質で評価する方法がある、端末設備等相互間における通話の総合品質に関しては事業用電気通信設備規則の細目で定められており、0AB~Jの電気通信番号を用いるIP電話の総合品質の基準は、【R値】を80を超える値とし、端末設備等相互間の平均遅延の時間を【150】〔ms〕未満として、これらの値を算出できる確率が95〔%〕以上でなければならない。

(2)JIS Z 8101-2:1999 統計-用語と記号-第2部:統計的品質管理用語について

(ⅰ)観測値・試験値に関する用語について述べた次の文章のうち、誤っているものは、(オ)である。

①測定結果とは、規定された測定方法の実施によって得られる特性の値の事を言う。

②合意値とは、真の値の代用として、所与の目的に合った値のことをいう。

③【かたより】とは、観測値・測定結果の期待値から真の値を引いた差のことをいい、【ばらつき】とは、観測値・測定結果の大きさが揃っていないことを言う。

④真度とは、真の値からのかたよりの程度のことをいい、かたよりが小さい方が、より真度が良い又は高いと言う。

⑤精確さとは、観測値・測定結果と真の値との一致の程度のことで、真度と精度を総合的に表したものを言う。

(ⅱ)サンプリング用語について述べた次の文章のうち、正しいものは、(カ)である。

<(カ)の解答群>

①サンプルサイズとは、【サンプルに含まれるサンプリング単位の数】のことを言う。

メモ:
http://kikakurui.com/z8/Z8101-2-1999-01.html
サンプリング単位:母集団を構成する単位。
サンプル:母集団の情報を得るために、母集団から取られた一つ以上のサンプリング単位。
母集団の大きさ:母集団に含まれるサンプリング単位の数。
無限母集団:大きさが無限大であると考えられる母集団。
有限母集団:大きさが有限である母集団。
サンプリング:母集団からサンプルを取ること。
復元サンプリング:一つのサンプリング単位が取られ、測定され、次のサンプリング単位が取られる前に母集団に戻される
サンプリング。
系統サンプリング:母集団中のサンプリング単位が、生産順のような何らかの順序で並んでいるとき、一定の間隔でサンプリング単位を取ることを言う。

②抜取り比とは、【サンプルの大きさと、サンプルが取られた母集団又は副母集団の大きさとの比】

③ランダムサンプルとは、【無限母集団又は復元サンプリングの場合には、独立で同一な分布からの確立変数によって構成されるサンプル。】

④層別サンプリングとは、【母集団を層別し、各層から一つ以上のサンプリング単位をランダムに取るサンプリング。】

⑤バルクマテリアルとは、個数では数えられないものの集まりのことを言う。

(3)故障に対応するためのシステム設計技術及び保全方式について

(ⅰ)故障に対応するためのシステム設計技術について述べた次の文章のうち、正しいものは、(キ)である。

<(キ)の解答群>

①故障発生を少なくして平均動作可能時間を長くするための信頼性設計技術には、使用部品数の低減、【システムの並列化、実績のある製品の採用】、フォールトトレランスの導入などがある。

メモ:
フォールトトレランス:構成要素の一部が故障・停止などした際予備系統に切り替えて正常に稼働し続けること

②システムや装置を構成する部品と特性値の経時変化による故障には劣化故障があり、劣化故障を設計段階から予測するための具体的な手法として、モンテカルロ法などが用いられる。

③FMEAは、システムや装置の故障原因として考えられる故障モードなどがシステム全体に及ぼす影響を予測し、システムに潜在する弱点を摘出する【ボトムアップ】的手法である。

④FTAは、あらかじめ対象システムにとって望ましくない単一の事象を規定し、それを生起させうる原因事象を洗い出してツリー状に展開する手法である。FTAは、【シンプルなシステムには適しているが、顕在化した不具合事象を解決するのに適していない】とされている。

メモ:
FTA(Fault Tree Analysis): 故障の木解析 トップダウン予防のための手法で、顕在化した不具合には適さない。
FMEA(Failure Mode and Effect Analysis) :故障モード影響解析。ボトムアップ手法。

(ⅱ)保全方式について述べた次の文章のうち、誤っているものは(ク)である。

<(ク)の解答群>

①保全方式は事後保全と予防保全に分類され、予防保全は予知保全(状態監視保全)と時間計画保全に分類することができる。

②保全方式における事後保全は、一般に、緊急保全と通常事後保全に分類することができる。通常事後保全は予防保全の対象としないシステムや装置の故障時に行う保全として分類されている。

③状態監視保全では、装置やシステムの動作状態の確認、劣化傾向の検出などの目的で、動作値及びその傾向を監視し、異常の兆候が見られる場合に修理などを行う。

④時間計画保全は、あらかじめ計画した時間間隔によって行う保全方式で一般に、予定の累積動作時間に達したときに部品交換を行う【経時保全】と、予定の時間間隔で部品交換などを行う【定期保全】に分類することができる。

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